「結局、S&P500だけ積み立てておけばいいんじゃない?」
投資を長く続けていると、何度かこの結論にたどり着く。
低コストで、分散されていて、個別企業を毎日追いかけなくてもいい。僕自身、NISAではS&P500系の投資信託を積み立てている。
合理性だけで考えれば、かなり強い。
それなのに僕の証券口座には、日本株もあれば米国株もある。半導体ETFもAI関連ETFも買うし、高配当にも手を出す。金も持つ。個別株も買うし、信用取引まで使う。
17年も投資してきたのに、結局「全部インデックス」にはならなかった。
なぜなのか。
長年投資した結果、僕がインデックス投資を否定するようになったわけではない。むしろ逆だ。昔より今の方が、インデックス投資の合理性はよく分かっている。
それでも個別株をやめないのは、たぶん僕にとって投資が「資産を増やすためだけの行為」ではなくなっているからだ。
この記事では、おすすめの投資法を紹介するつもりはない。17年間、勝ったり負けたり、時には盛大にやらかしたりしながら投資を続けてきて、今どう考えるようになったのか。自分の投資との付き合い方を、一度整理してみたい。
17年前、ETFという言葉すら知らなかった
投資を始めたのは約17年前。
……と言っても、最初から企業分析をしていたわけでも、資産配分を考えていたわけでもない。
ほぼ何も知らなかった。
今ならS&P500だのETFだの信託報酬だの、いろいろ調べてから買うと思う。でも当時の僕はETFという存在すら知らない。
名前を知っているような大企業の株を見ても、「高っ。こんなん買えんやん」となる。
結局どうしたか。
ネットか何かでおすすめされていた、よく知らない株を買った気がする。
銘柄名すら覚えていない。
そして、すぐ売った。
17年間の投資人生のスタートとしては、あまりにも味がない。「あの企業の将来性を確信して――」みたいな格好いい話は一切ない。
よく分からない株を買って、よく分からないまま売った。そこから始まった。
最初のNISAあたりから「積立でもいいんじゃないか」と思い始めた
その後も株式投資を続けた。少しずつ知識も増えていった。
僕の中で大きく変わったのは、最初のNISAが始まった頃だったと思う。
それまでの僕にとって、投資は基本的に「何を買うか」を考えるものだった。この会社は伸びるのか。今は安いのか。ここから上がるのか。そういう世界だ。
そこに、「毎月淡々と積み立てる」という別の考え方が入ってきた。
これ、別に毎回当てなくてもいいんじゃないか。
広く分散して、長く持って、積み上げていけばいい。そう考えるようになり、僕も積立投資を始めた。
現在もNISAではS&P500系を積み立てている。積立部分については、頻繁に売買するつもりもない。むしろ触らないための資産に近い。
以前まとめた2026年の投資戦略ルールでも、投資信託は「土台」として扱っている。
こうして書くと、ますます疑問が出てくる。そこまで分かっているなら、なぜ残りも全部S&P500にしないのか。
たぶん、そっちの方が楽だ
実際、全部インデックスにした方が楽だと思う。
決算を見なくていい。急落した個別株を見ながら、「これ、一時的な下げ……だよな?」と自分に言い聞かせなくていい。
半導体のニュースが出るたびに関連銘柄を調べる必要もない。信用余力を気にする必要もない。夜にPTSを開いて絶望する必要もない。
資産形成という目的だけなら、相当な時間を取り戻せるはずだ。
では、明日から一生S&P500しか買えなくなったらどう思うか。
たぶん、つまらない。
そしてそのうち、株のニュース自体をあまり見なくなると思う。
ある意味では空き時間が増えて、それはそれでいいのかもしれない。でも僕の場合、個別株を持つこと自体が市場を見る理由になっている。
僕は「好きな会社を持つ」のが好きだった
個別株を続けている最大の理由を考えると、結局ここに戻ってくる。
好きな会社を持ちたい。
そして、「この会社は伸びるやろ」と自分で考えた結果が、株価という数字で返ってくるのが面白い。
その会社の商品が好き。技術が面白い。この市場はこれから伸びそう。経営戦略がおもしろい。決算を見て、「思ったより強いな」と思う。
そうやって自分なりの仮説を作る。
数カ月後、数年後に株価が上がれば、「やっぱりな」となる。
もちろん、下がれば、「全然やっぱりじゃなかったな」となる。
株価はかなり残酷な答え合わせでもある。どれだけ自信満々に「この会社は絶対伸びる」と思っても、市場は普通に無視してくる。
その逆もある。自分が売った瞬間から上がることもある。非常に腹立たしい。
でも、それも含めて面白い。
インデックスでは味わえない「自分で選んだ感覚」
もちろんインデックス投資でも、経済や企業の成長へ投資していることに変わりはない。
ただ、感覚はかなり違う。
S&P500を買って、「今日はこの会社が強かったな」と思うことはあっても、500社全部に思い入れがあるわけではない。
一方、個別株なら違う。
自分で調べる。自分で決める。自分で買う。そして上がっても下がっても、判断したのは自分だ。
僕の場合、この「自分で選んだ」という部分にかなり価値を感じているようだ。
だから、インデックス投資の合理性と、個別株を買いたいという気持ちは、実は矛盾していない。
目的が少し違う。
インデックスは、資産形成の土台。個別株は、自分で考えて取りにいく投資。
今はそんなふうに分けて考えている。
とはいえ、17年間ずっと楽しく株をやってきたわけではない
ここだけ書くと、「個別株って楽しいよ!」という話に見える。
もちろんそんな優しい世界ではない。
僕には大きく勝った投資もある。逆に、「なんでこんなことしたんやろ」と今でも思う投資もある。
代表的なのがガンホーだ。
当時、株で資産を大きく増やした。成功体験を得た僕が次にやったのが、信用取引を使ってさらにポジションを大きくすることだった。
結果については、株で資産3倍──そのあと、俺が選んだ“最悪の決断”【爆死録#1】に詳しく書いた。
この経験だけなら、「ほら、だから個別株なんてやめればいい」で話は終わる。
ところが僕は終わらなかった。
その後も投資を続けた。成功もしたし、また失敗もした。NISAでやらかしたこともあるし、個別株で利益が出たこともある。
半導体株の値動きに振り回された末に、個別ではなくETFへ寄せたこともある。
なぜ私は2644をやめて、日経半導体ETF(200A)を選んだのかも、その延長線上にある。
個別株を完全にやめるのではなく、「このリスクならETFくらいに薄めた方がいいな」と考えるようになった。
AI関連でも似ている。iSベストAI(408A)を調べたのも、自分が投資したい対象を考えた結果、個別株とは違う取り方があると分かったからだ。
17年経って変わったのは、投資対象よりむしろ付き合い方なのかもしれない。
昔より知識は増えた。でも動かす金額も増えた
17年前と今を比べれば、当然ながら知識は増えた。
企業を見るポイントも増えた。ETFも知った。投資信託も知った。信用取引の怖さも知った。損益通算も知った。
下がったからとりあえず買う、というよりは、乖離やボリンジャーバンドを見たり、分割して入ったり、利確や損切りを事前に考えたりするようになった。
ただし、知識が増えたから安全になったかというと、そう単純でもない。
資産が増えれば、動く金額も大きくなる。
昔なら10万円下がって「痛いな」で終わったものが、ポジションが大きくなると数字の桁も変わってくる。
知識が増えるほど大胆になれる部分もある。
だから今は、昔よりもリスクヘッジを意識するようになった。
今は「当てる方法」より「壊れない方法」を考えることが増えた
昔は、「何を買えば上がるか」を考えることの比重が大きかった。
今ももちろん考える。
ただ、それと同じくらい、「外れた時にどうするか」を考えるようになった。
一度で全部入らずに分ける。信用余力を残す。利益が出た時にどこまで引っ張るか考える。想定が崩れたらどう撤退するか考える。
現在は信用余力を50%以上残すことを一つの目安にしている。
この辺りは2026年の投資戦略ルールでも整理した。
別に、このルールなら勝てるという話ではない。
むしろ逆だ。17年やっても間違えることが分かったから、間違える前提で考えるようになった。
ここが一番大きな変化かもしれない。
インデックスか個別株か、という二択ではなくなった
昔は、投資方法には「どれが一番儲かるか」という正解があるような感覚もあった。
今はあまりそう思わない。
僕自身の理想を大ざっぱに分けるなら、半分くらいは退屈でも合理的な投資。残り半分くらいは、自分で考えて取りにいく投資。くらいがしっくりくる。
もちろん、この比率を他人におすすめする気はない。資産形成だけが目的なら、もっとインデックスの割合を増やす方が自然だと思う。
逆に僕の場合、全部をインデックスにすると、たぶん投資自体への興味が薄れる。そして企業も市場もあまり見なくなる。
個別株を持っているから、「この会社どうなるんやろ」と調べる。
半導体ETFを持っているから、メモリ市場を見る。
AI関連ETFを持っているから、Anthropicのような未上場企業まで調べる。
それが自分にとっては面白い。
お金以外にも、ずいぶん知識をもらってきたと思う。
投資で得たものは、お金だけではなかった
17年間投資していると、嫌でも世の中を見るようになる。
金利が上がると何が起きるのか。為替が動くと誰が得をするのか。半導体不足とは何なのか。AI投資が増えると、どの企業へお金が流れるのか。戦争が起きたら市場はどう反応するのか。選挙や政策が企業へどう影響するのか。
普通に生活しているだけなら読み飛ばしていたニュースも、自分のお金が入っていると急に真剣に読む。
もちろん、株を持たなくても勉強はできる。
でも僕の場合、お金が入っている方が明らかに真面目に見る。
身銭ほど優秀な教材はなかなかない。
授業料が高すぎる時もあるけど。
だから、インデックス投資の合理性を否定する気はまったくない
むしろ、これだけ個別株でいろいろ経験してきたからこそ、積立投資のありがたさも分かる。
毎回会社を当てなくていい。相場を完璧に読まなくていい。長い時間を味方につけられる。
仕事もある。家庭もある。子どももいる。毎日株価だけ見て生活するわけにもいかない。
そう考えると、積立投資という仕組みは本当に強い。僕自身も続けている。
でも、その合理性を理解した結果、「じゃあ個別株は全部やめよう」とはならなかった。
合理的な資産形成はインデックスに任せる。それとは別に、自分で会社を選ぶ楽しみも残す。
今はその方が自分には合っている。
17年前の自分に言えるなら
では、17年前。
ETFすら知らず、ネットで見つけたよく分からない株を買っていた自分に、今なら何と言うか。
たぶんこう言う。
「よく分からん個別株を買う前に、VTみたいな全世界株を淡々と積み立てとけ」
「個別株はやめとけ」
17年間の経験を踏まえた、かなりまともな助言だと思う。
そして少し考えてから、もう一言付け加える。
「ただし、NVIDIAだけは全力で買っとけ」
……結局、個別株をやめる気はないらしい。
※この記事は筆者自身の投資経験と考え方をまとめたもので、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。

