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投資歴17年。いまだに普通に爆死する。【爆死録#5】

キオクシア株の急騰と急落を背景にした「投資歴17年。いまだに普通に爆死する。【爆死録#5】」のアイキャッチ画像

投資を始めて17年になる。

17年。

そこだけ聞くと、そこそこベテランである。

リーマンショックも見た。

コロナショックも見た。

NVIDIAで大きく取ったこともある。

何倍にもなった銘柄もある。

損切りの大切さも知っている。

信用取引が危ないことも知っている。

だから、もう昔みたいに、

「頼む。戻ってくれ。」

みたいな投資はしない。

……と思っていた。

最近、大きな爆死をした。

みなさんご存知。

キオクシアさんである。

祈ってましたよ。ええ。

5万円で買った株が、11万円になった

最初は良かった。

かなり良かった。

キオクシアを買ったのは、だいたい5万円前後。

正確な約定価格や時期は何度か売買もしているので少し曖昧だが、感覚としてはそのあたりだ。

そこから株価は上がった。

6万円。

7万円。

8万円。

9万円。

そして、一時11万円台。

最高だった。

株価も。

気分も。

買値から考えれば、ほぼ2倍である。

この時点で売っていれば、

「キオクシアで2倍取りました」

という、非常に気持ちのいい記事が一本できていた。

残念ながら、この記事のタイトルは「爆死録」である。

察してほしい。

売る理由より、持つ理由の方が多かった

なぜ11万円で売らなかったのか。

当時の僕には、ちゃんと理由があった。

決算は悪くない。

むしろ良い。

メモリ市況も良い。

Micronも強い。

SanDiskも強い。

SK hynixも強い。

AI需要もある。

データセンターも伸びている。

NANDもDRAMも、少なくとも「もう終わりです」という雰囲気ではない。

だったら、

「キオクシアだけここで終わる理由ある?」

と思った。

ここまでは、別におかしくない。

問題はその次だった。

僕はいつの間にか、

「キオクシアが下がる理由」

ではなく、

「キオクシアが他のメモリ企業よりもっと上がる理由」

を探していた。

似ているようで、かなり違う。

調査ではない。

答え合わせである。

最初に、

「まだ上がる」

という答えを決めて、

その答えを補強する材料を集める。

決算が良い。

よし。

メモリ市況が良い。

よし。

AI需要がある。

よし。

他社も上がっている。

よし。

キオクシアだけ売る理由がない。

よし。

全部、もっともらしい。

だから厄介なのだ。

悪材料も見えていた

もちろん、不安材料がなかったわけではない。

韓国ではレバレッジ投資への規制の話が出たり、若者の投資損失や破産がニュースになったりしていた。

ちょっと嫌だな、とは思った。

メモリ株は韓国勢の影響も大きい。

レバレッジで膨らんだ資金が逆回転したら、半導体株全体にも影響するかもしれない。

個別株ではなく半導体セクター全体へ分散する選択肢としては、日経半導体ETF(200A)を選んだ理由も別記事で整理しています。

そこまでは考えた。

でも結論は、

「まあ、そのうち落ち着くだろう」

だった。

悪材料は一時的。

好材料は構造的。

便利な脳である。

今なら分かる。

僕は悪材料を見ていなかったわけではない。

ちゃんと見ていた。

見たうえで、自分に都合よく処理していた。

これ、けっこう怖い。

そして下がった

株価が下がり始めた。

最初は、

「まあ、このくらいならある」

と思った。

11万円まで上がった株だ。

多少調整するのは普通である。

さらに下がる。

「さすがに売られすぎでは?」

と思った。

さらに下がる。

「ここで売ったら底になりそう」

と思った。

さらに下がる。

このあたりから、

チャートを見る目的が少しずつ変わってくる。

最初は、

「判断するため」

に見ていた。

途中から、

「戻っていることを確認するため」

に見ていた。

戻ってない。

もう一回見る。

戻ってない。

数分後にまた見る。

当然戻ってない。

株価、更新ボタン連打しても回復しないらしい。

新しい発見である。

「ここが底」と思った

さらに下がったところで、僕はまた入った。

「ここが底だろう」

そう思った。

決算は良い。

他のメモリ企業も悪くない。

業界全体のストーリーも壊れていない。

だったら、この下落は行き過ぎ。

そう考えた。

入った。

そこから急降下した。

底ではなかった。

僕が立っていたところは、

ただの途中階だった。

地下、まだありました。

一時は56,000円付近の建玉を抱えて含み損になり、どう処理するかをかなり考えていた時期もある。

「もう少し戻れば」

「ここで切るのはもったいない」

「材料は悪くない」

そういう言葉が増えていった。

このあたりまで来ると、

相場を見ているのか、

自分を説得しているのか、

よく分からなくなる。

保証金率18.84%

そしてある日。

保証金率を見た。

18.84%。

18.84。

投資記事であまり見たくない数字である。

今となっては良い思い出……

ではない。

普通に怖かった。

信用取引なので、含み損が増えるだけでは済まない。

余力も削られる。

さらに下がったらどうするか。

追加入金するのか。

建玉を落とすのか。

損切りするのか。

全部、頭では分かっている。

でも、含み損のど真ん中にいる人間というのは、

「頭では分かっている」

がかなり怪しい。

僕も冷静に考えた。

決算を見る。

需給を見る。

チャートを見る。

メモリ市況を見る。

他社の株価を見る。

そして祈る。

頼む。

戻ってくれ。

投資歴17年。

最終的にやっていることが神頼みである。

キオクシアに転職するか

ちょうどこの頃、僕は転職も考えていた。

そこで一瞬、

「もうキオクシアに転職して、持株会で積み立てればいいのでは?」

と思った。

給料が入る。

持株会で積み立てる。

株価が下がれば安く買える。

平均取得単価が下がる。

会社が成長すれば株価も上がる。

完璧である。

給料をもらいながらナンピン。

新しい。

もちろん大嘘である。

含み損を理由に転職先を決めるほど、

まだ壊れてはいない。

たぶん。

ただ、こんなことを考え始めるくらいには、

キオクシアさんと心中しかけていた。

それでも「割安な理由」を探していた

7月末ごろには、Micron、SanDisk、SK hynix、Samsung、キオクシアを並べて、

「どれが一番割安か」

まで比較していた。

ここで少し面白いことが起きた。

キオクシアより、

他のメモリ企業の方が割安では?

という見方も出てきた。

つまり、

自分の中でも薄々、

「キオクシアだけ特別に安いわけではない」

と気づいていた。

それでも、

「いや、キオクシアにはこういう強みがある」

と考える。

株価が上がる理由を探す。

また探す。

投資歴が長くなると、

企業を調べる能力は上がる。

でも同時に、

自分のポジションを正当化する能力も上がる。

経験値が上がった結果、

言い訳のスキルツリーまで開放された。

あまり嬉しくない成長である。

5万円で買って、11万円を見て、3万9,000円で売った

最終的に、

僕はキオクシアを3万9,000円前後で売った。

もう一度書く。

5万円くらいで買った。

11万円台まで上がった。

そして、

3万9,000円で売った。

なかなか芸術点が高い。

含み益2倍を見て、

最終的に損切り。

投資の教科書に載せるなら、

「こうならないようにしましょう」

のページだと思う。

もちろん、

11万円が天井だとその時点で分かっていたわけではない。

後からなら何とでも言える。

でも、ここまで上下を全部付き合わなくてもよかったのは確かだ。

一番高いところを見たから、

「また戻る」

という感覚が強くなった。

11万円を知っていると、

8万円が安く見える。

7万円はもっと安い。

5万円なら、

「元の買値じゃん」

となる。

4万円を割ると、

「さすがにこれは」

になる。

でも株価は、

僕の思い出に付き合ってくれない。

11万円だったことも。

僕が5万円で買ったことも。

僕が含み益を見てニヤニヤしていたことも。

市場には関係ない。

相場、知らんがな。

である。

経験者ほど、失敗しないと思っていた

昔は、

投資経験が増えれば、

こういう失敗は減ると思っていた。

これは半分正しい。

経験すれば、

やってはいけないことは分かる。

ポジション管理。

損切り。

集中しすぎない。

レバレッジを上げすぎない。

自分の買値を基準にしない。

全部知っている。

問題は、

知っていてもやることだ。

初心者の頃なら、

「怖いから売ろう」

で終わる。

17年やっている僕は、

「売らなくてもいい理由」

を10個くらい作れる。

決算。

需給。

メモリ価格。

AI需要。

他社比較。

バリュエーション。

過去チャート。

全部それっぽい。

だから持てる。

そして、

持ててしまう。

経験が増えると、

失敗しなくなるのではなく、

失敗を正当化する文章が上手くなることがある。

今回、かなり実感した。

祈り始めたら、だいたい遅い

今回の爆死で、

一つだけかなり分かりやすい指標を見つけた。

相場にはいろんな指標がある。

PER。

PBR。

RSI。

移動平均線。

出来高。

信用倍率。

僕にも一つある。

「祈り始めたかどうか」

である。

祈り始めたら、

たぶんポジションが大きすぎる。

株価を何度も更新して、

「戻れ」

と思い始めたら、

もう分析ではない。

もっと早くポジションを落とした方がいい。

これはかなり再現性が高そうだ。

僕限定で。

今、チャートを見る

今になってチャートを見返す。

大きな山がある。

11万円台まで上がったところ。

最高値の頃は、

本当に最高だった。

株価も。

気分も。

そしてそこから、

綺麗に下がっている。

今なら言える。

天井、ちゃんと見てたわ。

売らなかっただけで。

これが今回の一番分かりやすい学びかもしれない。

投資歴17年で、また一つ学んだ

投資歴17年。

今回もいろいろ学んだ。

自分の買値には意味がない。

良い決算でも株価は下がる。

正しい材料を集めても、

結論が正しいとは限らない。

経験者ほど、

自分に都合のいい説明を作れる。

そして、

祈り始めたらポジションが大きすぎる。

かなり勉強になった。

ただ、

全部まとめて一番分かりやすく言うと、

こうなる。

5万円で買って、

11万円を見て、

3万9,000円で売った。

俺、天井ちゃんと見てたわ。

売らなかっただけで。

最高値の時は最高だった。

投資歴17年。

経験値は増えた。

相場への影響力は知らない。

でも少なくとも、

今回分かったことが一つある。

僕が「ここが底」と思った時は、

一回疑った方がいい。

知らんけど。


これまでの爆死録:NISA一括で夢を見たあの日、僕はまだ明日という現実を知らなかった。【爆死録 #4】

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