年末が近づくと、株クラのSNSやニュースで、急に「損出し」という言葉を見かけるようになります。
「損益通算」「繰越控除」といった用語もセットで語られがちですが、正直、投資を始めたばかりの頃の私は、これらをすべて「なんとなく税金が安くなる魔法」のように、ごちゃっと理解していました。
ところが今年は、少し事情が違いました。
戦略的に「損出し」を考える以前に、普通にトレードで負けて、きれいに損失が出た年だったからです。
負けてみて初めて、
「これはちゃんと理解しておかないとマズいな」と思い、
制度を必死に調べることになりました。
今回は、混同されがちな
- 損益通算
- 損出し
- 繰越控除
このあたりを、制度としての正確さを重視しつつ、実体験ベースで整理してみます。
1. まず前提:日本の株式投資の税制(ここ超重要)
制度を理解するうえで、まず押さえておきたいのが、日本の株式投資における税金の仕組みです。
- 申告分離課税
上場株式や投資信託の利益は、給与所得などとは分けて計算されます。 - 税率:20.315%
所得税・住民税・復興特別所得税を合算した一律税率です。
この制度で最も重要なのが、
「同一年内であれば、利益と損失を相殺できる」というルール。
これを損益通算と呼びますが、
対象になるのは あくまで“確定した損失”のみ です。
含み損を抱えているだけでは、
税金計算上のメリットは――残念ながら、1円もありません。
【補足】特定口座(源泉徴収あり)の場合
同じ口座内であれば、証券会社が年内の損益を自動で通算してくれます。
ただし、
- 口座をまたいだ通算
- 翌年以降への繰越控除
を使う場合は、確定申告が必須です。
2. 「損益通算」とは何か?(制度の基本)
損益通算とは、
同じ年に確定した「利益」と「損失」をぶつけて、
最終的に課税される金額を減らす仕組みです。
たとえば、
- A株で +50万円の利益
- B株で −30万円の損失
を確定させた場合、
課税対象は
50万円 − 30万円 = 20万円
本来なら10万円以上かかる税金が、
約4万円程度で済む計算になります。
ここで大事なのは、
「負けた取引がある=自動的に税金が戻る」わけではない
という点です。
あくまで、
- 利益が出ていること
- それを相殺できる「確定損」があること
この2つが揃って、初めて意味を持ちます。
3. 「損出し」とは何か?(誤解されがちな言葉)
よく聞く「損出し」ですが、
実はこれ、法律や税務上の正式な用語ではありません。
一般的には、
含み損を抱えている銘柄をあえて売却し、
意図的に“確定損”を作る行為
を指して使われます。
目的は主に2つ。
- 今年の利益と相殺する
- 損失を確定させて、翌年以降の繰越控除に回す
できること:
- 損益通算
- 損失の繰越控除
できないこと:
- NISA口座との通算
- 含み損のまま節税すること
(NISAの損失は、税制上は「なかったもの」として扱われます)
4. 損失の「繰越控除」(ここが一番重要)
年間のトータル収支がマイナスになった場合、
ここで登場するのが繰越控除です。
株式等の損失は、
最長3年間、翌年以降の利益と相殺できます。
ただし、条件はわりと厳格。
- 損失が出た年に確定申告を行うこと
- 損失が確定していること
- その後も毎年、連続して申告すること
よくある誤解が、
「一度損出しすれば、3年間勝手に使える」
というものですが、
途中で申告を忘れると、その時点で権利は消滅します。
5. 【制度の限界】損出しは万能ではない
理論上は便利に見える損出しですが、
実務的には「やらない方がマシ」なケースもあります。
日本は、
- 単年度課税
- 損失繰越は3年まで
という構造のため、
年内に無理に調整しようとする動機が生まれやすい制度です。
ただし、損出しには
- 売買手数料
- スプレッド
- 為替変動(外国株の場合)
といった目に見えないコストが必ず発生します。
節税額とコストを天秤にかけて、
本当にやる価値があるかどうかは、冷静な判断が必要です。
6. 【実体験】今年の自分は「損出し以前に負けた」
冒頭でも触れましたが、
今年の私は「戦略的に損出しを検討する」段階にすら至りませんでした。
利益が出た取引もあります。
たとえば、ソフトバンクグループ(SBG)の上昇局面に乗れた場面などです。
ただ、その後の下落局面まで握ってしまい、
売買単位で見ると、大きなマイナスになった取引がいくつもありました。
結果として、
- 実現益よりも実現損の方が上回り
- 年間損益はマイナス
という着地です。
そのため今年は、
損出しによる調整ではなく、
損失をそのまま繰り越す判断をしました。
来年以降の利益と相殺できるよう、
きちんと確定申告を行う予定です。
7. 結論:損出しは「勝っている人」の武器
今回、改めて制度を整理して感じた結論はシンプルです。
- 損出しは、利益が出すぎている人のための調整テクニック
- 多くの個人投資家にとって重要なのは、
「負けた年をどう処理し、次に繋げるか」
負けるのは悔しいですが、
制度を正しく理解していれば、
その損失は「将来の利益にかかる税金の前払い」として活かせます。
「損益通算」と「繰越控除」。
この2つを味方につけて、
今年の負けを、未来の判断材料にしていきましょう。
注意事項
本記事は一般的な制度整理を目的としたものです。
実際の税務判断は個々の状況により異なるため、
国税庁の公式情報や税務署・税理士への確認をおすすめします。



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