子どもが生まれたあと、夫婦の関係が大きく揺れたことがある。きっかけとなった出来事だけを取り出せば、普段ならそこまで問題にならなかったかもしれない。私自身、最初はその出来事の大きさに目を向けていたように思う。
けれど、今振り返ると見方が変わった。最後のきっかけは小さくても、そこに至るまで二人が抱えていた負担は、決して小さくなかった。子どもが生まれて変わった日常の中で、私が見落としていた「余裕」について振り返りたい。
子どもが生まれて、毎日の前提が変わった
第一子が生まれたあと、私は育休を取り、ミルクを作り、おむつを替え、寝かしつけもした。当時は午前中を私が一人で担当し、午後は妻と二人で育児をする。夜は私が少し早めに寝る、という生活サイクルだった。少なくとも午前中は育児を任せてもらえていたと思うし、自分なりに育児に関わっていた実感もあった。
それでも、新生児との生活は想像以上に大変だった。授乳やおむつ替えで生活は細切れになり、眠れる時間も、落ち着いて話せる時間も、それまでと同じではなくなった。今まで当たり前にできていたことに、急に手間がかかる。予定どおりに一日が進むとは限らない。
育児だけが変化だったわけでもない。住まいの準備や家計のこと、将来のお金のことも同じ時期に考えていた。私は目の前の課題を一つずつ処理しているつもりだったが、家庭全体としてどれだけの負担が重なっていたのか、十分に見られていなかったと思う。
育児の作業を分担することと、お互いの余裕まで理解できていることは、同じではない。自分が担当したことは数えやすい。でも、相手がその日どんな心配を抱え、何に気を配っていたかは、意識しなければ見えにくい。
育児は二人でしていた。それでも考え方は違った
当時、私が特に戸惑ったのは、妻の言い方がかなり厳しくなっていたことだった。私はもともと、言葉の強さよりも「結局、何を伝えたいのか」「何をしてほしいのか」を考える方だ。それでも、厳しい言葉が続くと、夫婦の間にすれ違いが生まれた。
育児に対する考え方にも違いがあった。妻は育児のやり方に高い基準を持ち、夫の育児参加は当たり前という考えや、ほかの家庭との比較を口にすることもあった。私も育休を取って育児をしていたので、自分なりにやっているという思いはあった。ただ、何をもって十分と感じるかは、二人で同じではなかったのだと思う。
育休中は妻の実家で過ごしていた。日中は妻の両親が働いていたため、基本的には夫婦二人で子どもを見ていた。一方、家事は二人ともほとんど担当していなかった。だから、家事と育児を全部抱えていたという話ではない。育児への向き合い方や、お互いの行動の受け止め方にずれがあったのだと思う。
同じ行動が、相手には違って見えたかもしれない
午前中は私が一人で子どもを見て、午後は二人で育児をする。それぞれの時間に役割はあっても、子どもの世話を中心に生活が回る毎日だった。そんな中では、同じ言葉を受け止める余裕も以前とは違っていたと思う。
もちろん、疲れていれば厳しい言い方も仕方ない、と片付けたいわけではない。午前中の育児を任せてもらっていたからこそ、私は自分なりに役割を果たしていると思っていた。それでも、育児に何を求めるか、互いの行動をどう受け止めるかには違いがあったのだと思う。
もう一つ、今なら気になることがある。育休中も株式市場が動く時間にはスマホで売買をしていた。私にとっては投資だったが、妻には単にスマホを見ているように映り、その間は自分が育児をしなければならないと感じさせていたのかもしれない。実際にどう感じていたかは分からない。ただ、同じ行動が相手には別の意味に見える可能性を、当時の私は十分に考えていなかった。
育休が終わる直前、3人で出かけた日に話した
転機になったのは、私の育休が終わる直前だった。妻と子どもと3人で出かけたとき、私は「最近、当たりが強いんじゃない?」と話した。普段は言い方をそれほど気にしない私でも、当時の厳しさは気になっていた。
そのとき妻は謝ってくれた。そして、振り返ると産後クライシスだったのかもしれない、と話していた。私たちはそのあと仲直りし、二人で協力しながら育児ができたと思う。あの時期のすれ違いだけでなく、話し合えたことまで含めて、私たちの経験だった。
今振り返ると、どちらがどれだけ育児をしたかだけではなく、相手の行動がどう見えていたのか、何に負担を感じていたのかを言葉にすることが大切だったのだと思う。産後クライシスという言葉で一括りにするよりも、あの時期の私たちには、そうした認識のずれがあったと考えている。
私たちの場合、率直に話す機会があったことで関係を立て直せた。もちろん、話し合えば必ず解決するとは限らない。それでも、普段なら流せることが大きな衝突になるときは、目の前の一言だけでなく、その前から積もっていた負担や、お互いの受け止め方を見直す必要があると感じた。
※出産直後に私が担当した育児や、その後に感じたことは、別記事「男性育休を取って分かったこと」にも記録している。


