新生児期、わが家では夫も妻の実家に滞在し、夜間対応、午前中の育児、お風呂などを日常的に担当していました。
ところが仕事復帰後、夫は自宅へ戻り、妻と息子は長期里帰りを継続。3月から8月までは基本的に別居し、GWに約2週間一緒に過ごしたものの、「毎日会う父親」ではない期間が続きました。
そして再び家族3人で暮らし始めた頃、少しショックな変化がありました。
抱っこしようとすると嫌がる。夜になるとママを求める。眠い時や不安そうな時ほど、パパでは落ち着きにくい。
新生児期にはあれだけ一緒に世話をしていたのに、「結局、ママじゃないとダメなのか」と父親として少し寂しくなりました。
ただ、よく見ると話はそこまで単純ではありませんでした。
機嫌がいい時には普通に一緒に遊ぶ。自分からパパのところへ来る。こちらが「抱っこ?」と手を広げると、来てくれる場面も少しずつ増えてきた。
この記事では、「息子はパパを嫌いになったのか」ではなく、なぜ平常時には父親とも楽しく過ごせるのに、眠い時・不安な時・夜には母親を強く求めるのかを、研究とわが家の実体験の両方から考えます。
結論から言うと、夜にママを求めることだけで、父子関係が悪いとは判断できません。赤ちゃんは複数の養育者と関係を作れますし、その瞬間の状態によって「今は誰に近づきたいか」が変わることもあります。そしてわが家では、再び一緒に暮らし、日常を積み重ねる中で父子の距離は実際に変わってきました。
新生児期は、パパも毎日育児していた
出産直後のわが家は、いわゆる「パパは週末だけ育児」という形ではありませんでした。
夫も妻の実家に滞在し、夜間のミルクや対応、午前中の育児、お風呂などを担当。妻が休める時間を作る意味でも、できるだけ日常の育児に入っていました。
だから当時の感覚としては、「息子にとって自分もかなり見慣れた人になっているだろう」と思っていました。
もちろん、新生児期の赤ちゃんが父親をどの程度「覚えていたか」は別の記事で扱うテーマです。
長期里帰りで離れていた間に、赤ちゃんが父親をどう捉えていたのかは、長期里帰りで赤ちゃんはパパを忘れる?離れて暮らした父と息子の実体験で詳しく書いています。
今回のテーマは、その後です。
仕事復帰で「毎日会う父親」ではなくなった
仕事復帰後、夫は妻の実家を離れ、妻と息子はそのまま長期里帰りを続けました。
3月から8月までは基本的に離れて生活し、GWには約2週間一緒に暮らした時期もありましたが、毎日の授乳、眠くなった時、ぐずった時、起きた時といった細かな生活の積み重ねは、どうしても妻の方が圧倒的に多くなります。
ここは事実として重要だと思っています。
「父親が育児をしていなかった」のではありません。新生児期にはかなり関わっていました。
ただ、その後に「父親と毎日一緒ではない期間」があった。
そして再同居後、息子の反応には明らかに差がありました。
再同居したら「ママじゃないとダメ」に見えた
一緒に暮らし始めた直後は、こちらが抱っこしようとしても嫌がられることがありました。
特に夜は分かりやすく、パパが相手をしていてもママを求める。昼間なら遊んでくれるのに、眠くなってくると急に「違う」と言われているような反応になる。
父親側としては、これは地味に効きます。
新生児期には夜も起きて、お風呂も入れて、午前中も見ていた。それでも数か月たつとこうなるのかと。
ただ、ここで「長期里帰りで父子の愛着が壊れた」と考えるのは早すぎます。
なぜなら、同じ息子が昼間の機嫌がいい時には普通にパパのところへ遊びに来るからです。
機嫌がいい時は、普通にパパとも遊ぶ
再同居後も、息子はずっと父親を避けていたわけではありません。
むしろ機嫌がいい時には、こちらへ自分から近づいてきて一緒に遊びます。朝、妻がまだ寝ている時は父親が相手をすることも多く、その時間は比較的落ち着いて過ごせています。
最初は「抱っこ? やだ」という反応に見えることが多かったのが、最近はこちらが手を広げて「抱っこ?」とすると、来てくれる場面が増えました。
この変化を見ると、「パパが嫌い」という説明ではうまく当てはまりません。
遊びたい時には来る。でも、眠い時や不安な時にはママを強く求める。
むしろ、子どもの中で状況によって養育者への求め方が違う、と考えた方が自然でした。
赤ちゃんの愛着は「母親一人だけ」に作られるわけではない
愛着という言葉は、「一番好きな人」という意味で使われがちですが、発達研究ではもう少し具体的です。
乳幼児は、不安や恐怖、疲労などでストレスが高まった時に、特定の養育者へ近づき、安心を得ようとします。一方、安心できている時には、その養育者を安全基地として周囲を探索したり遊んだりします。
そして、この関係は母親だけに限られません。
母親と父親の双方に対する愛着を調べた研究では、子どもが母親と父親にそれぞれ異なる愛着関係を持ちうることが示されています。複数の養育者との愛着ネットワークをどう考えるかは現在も研究が続いていますが、「愛着は必ず一人だけ」という単純な見方は支持されていません。
WHOも、乳幼児期の発達に重要なものとして、子どものサインに気づき、理解し、適切に応答する「responsive caregiving(応答的な養育)」を重視しています。重要なのは母親か父親かという肩書きより、日常の中で子どものサインにどう応答するかです。
「パパ見知り」と「愛着」は同じではない
「パパ見知り」という言葉は育児ではよく聞きますが、研究上の標準的な診断名ではありません。
生後後半になると、見慣れない人に警戒したり、養育者が離れると泣いたりする行動が増えます。CDCでも9か月ごろの社会・情緒面の発達として、「知らない人に対して恥ずかしがる、しがみつく、怖がる」「養育者が離れると反応する」といった行動を挙げています。
ただし、父親への拒否反応があったからといって、そのまま「父親との愛着がない」とは言えません。
父親が完全な他人でなくても、毎日一緒にいた養育者と比べれば接触頻度には差があります。そこに人見知り、分離不安、その日の眠気や疲れ、直近の生活リズムなどが重なれば、「今はママがいい」という反応は十分ありえます。
なぜ夜や眠い時ほどママを求めるのか
わが家で一番不思議だったのはここでした。
昼間はパパと遊べる。それなのに夜になると、急にママでないとダメになる。
米国小児科学会のHealthyChildrenでは、分離不安は生後後半から目立ちやすくなり、空腹、疲労、体調不良などがあると別れや移行が難しくなりやすいと説明しています。また、夜間の睡眠にも分離不安が影響し、一方の親を強く求めることがあるとしています。
さらに、2歳児を対象にした研究では、子どもが平常時には母父どちらかへ明確に偏らなくても、ストレスを感じている時には、日常的な世話をより多く担っている主な養育者へ近づく傾向が観察されています。
この研究は2歳児が対象なので、そのまま乳児に当てはめることはできません。ただ、「機嫌がいい時」と「不安な時」で、求める相手が変わりうる」という考え方は、わが家の様子を理解するヒントになりました。
つまり、夜の「ママがいい」は、パパへの評価というより、疲れや眠気で余裕がなくなった時に、最も慣れた安心ルートを選んでいる可能性があります。
父親は「遊び相手」でしかないのか?
一時期、少し気になったのがこれです。
機嫌がいい時はパパと遊ぶ。でも困った時はママに行く。
それならパパは、結局「遊び担当」でしかないのか。
研究を見ると、そう単純でもありません。
父親の敏感な関わりと父子の愛着の安定性には、小さいながらも統計的な関連があることがメタ分析で示されています。また、乳児期の父母を追った研究では、遊びだけでなく、授乳、入浴などを含む日常的なケアへの関与も、父子・母子それぞれの愛着の安定性と関連していました。
別の縦断研究でも、父親の関与や敏感な応答は、その後の父子の愛着と関連していました。
つまり「遊ぶこと」は軽い役割ではありません。ただし、遊びだけで関係が完成するわけでもない。
遊ぶ。抱っこする。お風呂に入れる。朝に一緒に過ごす。泣いた時にも対応する。
こうした別々の場面で「この人と一緒にいて大丈夫」という経験が積み重なることが、父子関係には重要なのだと思います。
2026年に日本の父子54組を対象に行われた研究でも、12〜18か月の乳児と父親の愛着を観察したところ、安定した愛着が最も多い分類でした。その一方で、父親との観察場面の中で母親を呼ぶ乳児も確認されています。
小規模研究なので一般化はできませんが、「ママを求めること」と「父親との愛着があること」は、必ずしも矛盾しないという点は興味深い結果です。
わが家では、父子関係は少しずつ変わった
再同居直後と今を比べると、少なくともわが家では父子の関係は変わっています。
最初は抱っこを嫌がられる場面が目立った。
今は「抱っこ?」と手を広げると、来てくれることが増えた。
最初は「ママがいないと無理なのでは」と感じることがあった。
今は朝、妻が寝ている間に父親と過ごしていても、普通に遊んでいることが多い。
機嫌がいい時には、自分から父親のところへ来ることも増えました。
もちろん、夜はまだママの方が強い。
でも、それを見て「父子関係が戻っていない」とは思わなくなりました。
昼間の遊び、朝の時間、抱っこへの反応を合わせて見ると、父子の関係そのものは少しずつ広がっているように見えるからです。
長期里帰りで離れていた影響はあったのか
ここは断定できません。
3月から8月まで毎日会わない期間があったことは事実です。その期間、息子にとって妻の方が日々の生活で圧倒的に接触時間の長い養育者だったことも事実です。
だから、再同居直後に父親より母親を求める場面が多かったことに、その生活歴が影響していた可能性はあります。
一方で、「何週間会わなかったから忘れた」「離れていたから愛着が壊れた」と結論づけられる研究は見つかりませんでした。
むしろ愛着研究では、親子関係は固定されたラベルではなく、その後の養育者の応答性や関わりの変化とも関連することが示されています。
ただし、わが家のような「新生児期は同居→数か月は父子別居→再同居」という条件そのものを直接検証した研究は限られています。
そのため、ここは研究で因果関係を断定するより、「離れていた期間はあった。その後、一緒に暮らす時間が増えるにつれて反応も変わってきた」という観察事実をそのまま残しておくのが妥当だと思っています。
「取り戻す」より、毎日の中で作っていく
最初は、父子関係を「元に戻す」感覚がありました。
新生児期には毎日世話をしていた。その状態に戻したい、と。
でも今は少し考え方が変わっています。
赤ちゃんは数か月でどんどん変わります。新生児期の関係を保存しておいて、再同居したら続きを再生できるわけではありません。
むしろ、その時点の息子と新しく関係を作っていく。
朝、妻が寝ている時間に一緒に過ごす。
機嫌がいい時にたくさん遊ぶ。
抱っこを嫌がる時は無理に押し切らず、受け入れてくれる機会を増やす。
お風呂や日常のケアにも入る。
泣いた時にも、すぐ「ママじゃないと無理」と諦めず、できる範囲で関わる。
WHOが重視する応答的な養育も、特別なイベントではなく、こうした日常のやり取りの積み重ねです。
父子関係は、新生児期にどれだけ育児したかだけで決まるものではない。
その後、どれだけ一緒に生活し、子どものサインに応え続けるかでも変わっていく。
今のわが家では、その方が実感に近いです。
まとめ:夜にママを求めても、パパとの関係が悪いとは限らない
長期里帰り後に再同居したわが家では、当初は「ママじゃないとダメ」に見える場面がかなりありました。
特に夜、眠い時、不安そうな時はママが強い。
一方で、機嫌がいい時には父親ともよく遊び、自分から近づき、抱っこを受け入れる場面も少しずつ増えています。
研究上も、赤ちゃんは複数の養育者と関係を形成できます。そして、平常時とストレス時では求める相手が違うことがあります。
だから今は、「パパかママか」という勝負として考えないようにしています。
息子にとって、ママはママ。
パパはパパ。
同じ役割になる必要はないし、その瞬間にママを選んだからといって、父子関係全体が否定されたわけでもない。
長期里帰りで毎日会えない期間はありました。
それでも、再び一緒に暮らし、朝の育児、遊び、抱っこ、お風呂などを積み重ねる中で、父子の距離は少しずつ変わってきました。
「取り戻した」というより、今の息子との関係を毎日作り直している。
今のところ、それが一番しっくりくる答えです。
これから歩き始め、言葉が増え、生活範囲が広がった時に、父子関係がまたどう変わるのか。そこも引き続き観察していこうと思います。
参考にした主な資料
- WHO「Improving early childhood development」
- Dagan & Sagi-Schwartz(2018)Early Attachment Network with Mother and Father
- Lucassen et al.(2011)The association between paternal sensitivity and infant-father attachment security
- Fuertes et al.(2016)The effects of parental sensitivity and involvement in caregiving on mother-infant and father-infant attachment
- Brown et al.(2012)Father involvement, paternal sensitivity, and father-child attachment security in the first 3 years
- Umemura et al.(2013)Do toddlers prefer the primary caregiver or the parent with whom they feel more secure?
- American Academy of Pediatrics / HealthyChildren「How to Ease Your Child’s Separation Anxiety」
- American Academy of Pediatrics / HealthyChildren「Separation Anxiety & Sleeping Trouble in Young Children」
- CDC「Milestones by 9 Months」
- Attachment classifications and their correlates in Japanese father–infant dyads(2026)


