こどもNISAが始まるなら、わが家でも使うつもりです。
すでにわが家では、0歳の子どもの児童手当から毎月1.5万円を未成年口座で投資しています。こどもNISAが始まったら、この積立先を切り替えることも考えています。
ただ、制度を調べていて一つ気になりました。
このお金、18歳になったらどうなるんだろう。
仮に長期間積み立てて数百万円になったとして、18歳になった本人がいきなり自由に管理することになる。もし全部売って使ってしまったら。SNSで見た投資に一括で突っ込んだら。売却した資金をレバレッジ取引に回して、大きく失ったら。
最初はそんなことを心配していました。
ところが、海外の制度や実際のデータまで調べると、「18歳に大きな資産を任せるのは危険」という単純な話でもなさそうです。
今のところ、わが家の結論はシンプルです。
18歳で完璧な投資家になっている必要はない。でも、18歳で初めて投資の本番を迎える状態にはしたくない。
こどもNISAへいくら入れるかという「入口」の考え方は、「こどもNISAが2027年開始。児童手当を投資している0歳児家庭はどう切り替える?」で整理しました。今回は、その先の「出口」を考えます。
こどもNISA、18歳になったらどうなる?
2026年10月時点で成立している制度では、2027年からNISAのつみたて投資枠が0〜17歳にも広がります。0〜17歳の年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円です。
12歳以降は、資金を子どものために使うことや本人の同意など、一定の要件を満たせば払い出しが可能になります。
ここで少し注意したいのが「18歳」の扱いです。
民法上は18歳の誕生日に成年となり、親権に服さなくなります。一方、NISAの未成年向け勘定は、その年1月1日時点で18歳未満かどうかを基準にします。つまり、親権上の成年到達日と、NISA制度上の年齢区分は同じ日ではありません。
少なくとも、「18歳の誕生日に親が資産をプレゼントする制度」ではありません。口座名義は子ども本人で、成年後は本人が契約・資産管理の主体になります。
だから親として考えるべきなのは、「18歳になったら渡すか」ではなく、本人管理になるまでに何を経験させておくかだと思います。
ジュニアNISAや普通の未成年口座はどうなる?
似た制度でも移行の仕方は少し違います。
旧ジュニアNISAで保有している資産は、新しい成人NISAへそのままロールオーバーできません。2024年以降は年齢にかかわらず非課税で払い出せますが、原則として一部だけではなく、口座内の資産を払い出して口座を廃止する仕組みです。
通常の未成年証券口座も、金融機関によっては成年前から本人を取引主体にできます。
さらに、新しいこどもNISAでも段階的な本人取引を用意している証券会社があります。
例えばPayPay証券では、0〜11歳は親権者が取引主体ですが、12〜17歳は本人を取引主体にできます。12〜14歳は取引のたびに親権者の承認が必要で、15〜17歳は本人が取引主体なら取引ごとの親承認は不要です。
「17歳まで親が全部操作して、18歳から突然すべて本人」という二択ではありません。
親が管理する。親の承認付きで本人が取引する。本人が自分で取引する。こうした段階を作れる金融機関もあります。
海外では16歳から管理する制度もある
この問題、日本だけなのかと思って調べると、かなり近い制度が英国にありました。
英国のJunior ISAは、親などが管理を始めますが、お金は子どものものです。16歳になると本人が口座管理を引き継ぐことができ、18歳になるまでは原則として引き出せません。18歳になると成人ISAへ移行し、本人が引き出せるようになります。
つまり結果として、16歳で管理経験を持ち、18歳で資金へ完全にアクセスできるという二段階になっています。
日本で考えていた「18歳になる前から少しずつ管理経験を持たせる」という発想にかなり近いと感じました。
実際、18歳になったら全部使ってしまうのか?
さらに意外だったのが、実際の行動データです。
英国AJ Bellが、2023〜2025年に自社で満期を迎えたJunior ISAを調べたところ、18歳から1年以内にほぼ全額を引き出した人は6.5%でした。何らかの引き出しをした人は19.0%、半分超を引き出した人は8.9%。一方、33.1%は成人ISAへ移行した後に追加投資していました。
Hargreaves Lansdownでも、2024/25年度に満期を迎えたJunior ISAの85%は、1年後も資金が投資されたままだったとしています。
もちろん、どちらも各社の顧客データで、英国の18歳全体を代表する統計ではありません。
それでも、「18歳になったら大半が全部使ってしまう」と考えるのは悲観的すぎるようです。
ここは、私自身も調べる前とは少し考えが変わりました。
でも、若い投資家には別のリスクがある
では何も心配しなくていいのか。そこも違いました。
英国FCAが18〜40歳の若年投資家を調査したところ、51%がFOMO(取り残される恐怖)によって当初予定していた以上のお金を投資した経験があると回答しています。
Instagram、TikTok、YouTubeなどのSNSが投資判断に強く影響すると答えた人は85%。43%はSNSを主要な投資情報源としていました。
さらにFCAが9,000人超を対象に行ったオンライン実験では、価格の点滅、プッシュ通知、投資家ランキング、ポイントや抽選といった取引アプリの仕組みが、取引頻度やリスクテイクを増やしました。18〜34歳や金融リテラシーの低い参加者で影響が大きい傾向も見られています。
つまり私が最初に心配していた「18歳で大金を持つこと」そのものより、投資経験が少ない状態で、SNS、FOMO、取引アプリの誘惑に直接さらされることの方が、具体的なリスクとして考えやすそうです。
金融教育をすれば防げる?そこまで単純でもない
金融教育そのものには意味があります。
2022年にJournal of Financial Economicsへ掲載されたメタ分析では、76件のランダム化比較試験、合計16万人超を分析し、金融教育は金融知識だけでなく、その後の金融行動にも平均的にプラスの因果効果があると報告されています。
一方で、別の学校金融教育のメタ分析では、知識への効果に比べ、実際の金融行動への効果は小さめでした。
知識を教えることには意味がある。でも「知っている」と「実際にその通り行動する」は同じではない。
投資をしている大人なら、かなり実感しやすい話だと思います。
分散投資が大切だと知っていても集中したくなる。損失を取り返そうとしてはいけないと分かっていても、買い増したくなる。長期投資のつもりでも、急落すると売りたくなる。
だから、わが家では知識だけでなく、実際のお金を使った経験も持たせたいと考えています。
わが家なら18歳になる前に「小さな本番」を経験させたい
ここからは、効果が科学的に確立された方法ではなく、わが家で試してみたい案です。
18歳になって数百万円の口座を初めて見せて、「今日からあなたのお金です。ちゃんと運用してね」という状態にはしたくありません。
もっと前から、少額でも実際の投資判断を経験してもらう。
- なぜ買うのか
- どの程度下がる可能性を考えているか
- なぜ売るのか
- 判断したあとに何が起きたか
こうしたことを自分で考えてもらう。
ただし、「好きにやっていい」という意味ではありません。
信用取引や過度なレバレッジには安易に入らない。SNSで見ただけの商品へ全額を入れない。損失を取り返すためだけの追加入金をしない。大きな判断はその場で決めず、一度時間を置く。
こうした基本ルールを最初は一緒に作るつもりです。
ここでいう「約束を守る」は、親の投資方針に従い続けることではありません。前提が変わればルールを変えてもいい。最終的には、自分で合理的なルールを作り、自分で守り、変更するなら理由を説明できる状態を目指したいです。
儲かったかどうかだけでは評価しない
投資教育で一番気をつけたいのは、「儲かった=正解」にしないことです。
ルールを守って利益が出た。これは良い経験です。
ルールを守って損失が出た。投資なら普通に起こります。これも振り返れば良い経験です。
ルールを破って損失が出た。問題が分かりやすく表面化します。
そして難しいのが、ルールを破って利益が出た場合です。
無計画に集中投資して2倍になれば、投資結果だけ見れば大成功です。でも、それを理由に次はもっと大きな金額を集中させるようになったら、教育として成功だったのかは分かりません。
だから本人に任せる範囲を広げる場合も、「儲かったから次は金額を増やす」ではなく、どう判断したかを見て、もう少し任せてもよさそうなら裁量を広げる、くらいにしたいです。
少額投資を経験すれば、大きな資産でも必ず自制できるようになるという根拠があるわけではありません。これはあくまで、18歳で突然本番を迎えるよりはよいのではないか、というわが家の仮説です。
こどもNISAの一部を本人に考えてもらう方法もありそう
最初は別の未成年口座などで、少額の実投資を経験してもらう方が扱いやすいかもしれません。
こどもNISAは長期・積立・分散投資向けの一定の商品が対象なので、個別株を自由に選ぶような練習とは性格が違います。
一方、ある程度年齢が上がったら、こどもNISAの一部について「このまま持つか」「売るか」「別の対象商品へ替えるか」を本人に考えてもらうのはありだと思っています。
全部を自由にする必要はありません。
資産のごく一部だけを本人の判断対象にしてみる。大きく値下がりしたときにどう考えるか。含み益が出たときにもっとリスクを取りたくならないか。
そういう経験を、完全に本人管理へ移る前にしておく。
英国Junior ISAのように、管理経験と完全アクセスの間に時間を置く考え方は参考になります。
18歳になったら、親は管理を手放す
ここまで考えて、もう一つ重要だと思ったことがあります。
18歳以降も親が口座を管理し続ければいい、という話ではありません。
成年になると、本人が自分で契約でき、親権にも服さなくなります。本人が十分考えた結果として、一部を売る、別の商品へ乗り換える、投資額を減らすという判断をしたなら、親の考えと違っても失敗とは言えません。
親にできるのは、本人管理になる前に判断材料と経験を渡しておくこと。
18歳になったら、管理者から相談相手へ移る。
そこまで含めて、こどもNISAの「出口」なのだと思います。
結論|18歳で突然本番にしない
こどもNISAについて調べ始めたとき、私は「18歳で数百万円を自由にしたら危ないのでは?」と思っていました。
でも海外のデータを見ると、18歳になった若者の多くがすぐ資産を使い切るわけではありません。
一方で、若年投資家がFOMOやSNS、取引アプリの影響を受けやすいというデータはあります。金融教育にも一定の効果はありますが、知識を教えただけで行動まで完全に変わるわけでもありません。
だから、今のところわが家では「18歳で突然本番にしない」ことを一つの目標にしたいと思っています。
少額でも実際に投資する。自分で考える。ルールを作る。損することも経験する。振り返る。そして少しずつ、自分のお金として判断する範囲を増やしていく。
それで18歳以降の大きな失敗を防げる保証はありません。
それでも、何の経験もないまま数百万円の資産管理を始めるより、準備できることはある。
こどもNISAで18年間積み立てるなら、資産を育てる18年間だけでなく、その資産を自分で扱う準備をする18年間としても考えてみたいと思います。
参考資料
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
- 金融庁「アクセスFSA 第273号」
- 法務省「民法(成年年齢関係)改正 Q&A」
- PayPay証券「こどもNISA FAQ」
- GOV.UK「Junior ISA」
- AJ Bell「Young savers shun spending spree as only 6.5% empty Junior ISA at age 18」
- Hargreaves Lansdown「JISAs and JSIPPs」
- FCA「Young investors and FOMO」
- FCA「Digital engagement practices: a trading apps experiment」
- Journal of Financial Economics「Financial education affects financial knowledge and downstream behaviors」
※本記事は、制度や公開データをもとに筆者が家庭での方針を考えた記録です。特定の金融商品・投資手法を推奨するものではありません。制度・金融機関の取扱いは変更される可能性があるため、実際に利用する際は最新の公式情報をご確認ください。

