「ChatGPTでペットを飼えるらしい」
最初に気になったのは、正直そこでした。
OpenAIが発表した新機能「Dots」では、自分のdotに名前を付けたり、キャラクターやペットを選んだりできます。dot自身にペットを生成してもらうこともできるそうです。
なにそれ、ちょっと欲しい。
ところが調べてみると、ペットは完全に入口でした。
最初は「ChatGPTと話していない間も働いてくれる常駐AI」がDotsの本体だと思いました。
でも、ここも少し違いました。
定期実行も、イベントをきっかけにした自動処理も、クラウド上で長時間仕事を続けることも、すでにChatGPT WorkやCodexなどでできます。端末を閉じてもクラウド側で動くこと自体も、今に始まった話ではありません。
Dotsで本当に面白いのは、「ずっと動くこと」ではありません。
何を見るべきか、何が重要か、次に何をすべきかまで、AI側に判断を寄せ始めたことです。
私は普段からChatGPT、Codex、GitHub、Google Driveなどを使って、ブログ運営や作業の自動化をしています。以前はOpenClawのような常駐AI環境も作り、最終的にはChatGPT中心の構成へ戻しました。
そのため今回は、「Dotsで何が自動化できるか」よりも、「人間が次の仕事を考える部分まで、本当にAIへ任せられるのか」という視点で見ています。
なお、執筆時点で私はDotsをまだ実際には使っていません。以下は公開されている仕様を、自分の運用に当てはめて考えた内容です。
結論:かなり気になる。でもDots目的だけでProにはまだ上げない
結論的には、Dotsはかなり気になります。
ただし、Dotsを使うためだけに今すぐChatGPT PlusからProへ上げるつもりはありません。
現在、ChatGPT Plusは月額20ドル、Proは月額100ドルです。私の場合、Dotsを使うためにProへ上げるなら、単純計算で毎月80ドルの追加になります。
その80ドルで買いたいのは、「自動化できる機能が1つ増えること」ではありません。
ニュースを見る、メールを見る、タスクを実行する、といった処理だけなら今の仕組みでもかなりできます。
私が期待しているのは、「次に何を確認すべきか」「これは対応が必要か」「次は誰に仕事を振るべきか」を考える回数そのものが減ることです。
そこまで減るなら月80ドルにも意味が出てくる。逆に、結局こちらから細かく指示し続ける必要があるなら、今の環境でも十分です。
Dotsとは?「ずっと動くAI」ではなく「次の仕事を考えるAI」
OpenAIはdotを、通常のChatGPT会話とは違う「always-on agent」と説明しています。
GPT-6 Astraを搭載し、自分専用のクラウドコンピューターを持ち、接続したアプリの情報を使いながら継続的に仕事を進めます。
ただ、私が重要だと思ったのは「always-on」の部分だけではありません。
OpenAIの説明では、dotに目標を渡し、何を自分で実行してよいかを決めると、複雑な問題に取り組み、次のステップを判断し、結果を報告できます。接続したアプリの情報も、具体的な質問をしていなくても能動的に確認し、記憶に反映できます。
ここが従来の自動化との違いです。
従来の定期実行なら、
「毎朝8時にAIニュースを3件まとめて」
と、人間が「何をするか」と「いつするか」を決めます。
イベント型なら、
「このメールが来たら返信案を作って」
と、「何を監視するか」と「その後に何をするか」まで人間が決めます。
Dotsで期待されているのは、もう一段上です。
「このテーマを継続して見ておいて」
「この仕事が止まらないように面倒を見て」
と目標と権限の境界を渡し、その範囲で何を確認するか、何を重要とみなすか、次に何をするかをAI側に寄せる。
つまり、
ChatGPT:毎回の依頼を人間が決める
定期・イベント自動化:仕事と実行条件を人間が決める
Dots:目標と権限を人間が決め、その先の状況判断をAI側へ寄せる
という違いです。
もちろん「何でも勝手に考えて動くAI」ではありません。あくまで人間が与えた目標、接続先、権限の範囲で判断させる仕組みです。
AIペットは何をしてくれる?
そして気になっていたペット。
dotには名前やアバターを設定でき、用意されたキャラクターだけでなくペットも選べます。さらに、dot自身にペットを生成してもらうこともできます。
ただし現時点では、「AIペット育成サービス」のようなものではありません。
どちらかというと、継続して仕事を持つAI担当者に見た目や人格を持たせる仕組み、と考える方が近そうです。
仕事には直接関係ありませんが、毎日接するAIなら無機質なアイコンより名前とキャラクターがあった方が愛着は湧きそうです。
私は使えるようになったら、とりあえずペットから作ると思います。
仕事を効率化する前にペット選びから始まりそうなのは少し気になります。
Work・Codex・OpenClawとの違いは「次の仕事を誰が決めるか」
ここが今回いちばん整理したかったところです。
ざっくり分けると、私はこう理解しています。
ChatGPT:その場で相談・調査・判断する
ChatGPT Work:人間が与えた複数ステップの実作業を進める。定期実行やイベント起点の処理、変化監視もできる
Codex:コード、repo、ターミナルを中心に技術作業を実行する
OpenClaw:自分でGateway、モデル、Skills、Cron、Webhookなどを組み合わせて作る常駐AI基盤
Dots:目標を持ち、状況を見ながら次の仕事を判断し、必要なら別の実行役へ仕事を振る担当者
つまり、DotsとWorkの違いは「自動で動けるか」ではありません。
WorkにもScheduled Tasksやイベント起点の処理があります。
違いは、次にやる仕事を誰が定義するかです。
「毎日この処理をして」は自動化です。
一方で「この仕事を見ておいて。重要な変化があれば必要な対応を考えて」は、よりエージェント的な任せ方です。
Codexとの違いも同じです。
Codexは「どう直すか」「どう作るか」を実行する側に強い。
Dotsは「そもそも直す必要がある」「次はこの作業が必要」と判断する側へ寄っています。
しかもdotは、必要に応じてWorkやCodexのタスクを作成できます。
私
↓
Dot
↓
Work / Codex
↓
各アプリやGitHub
という構造も成立します。
DotsはCodexを置き換えるというより、Codexを使う側に回る。ここが面白いところです。
OpenClawとはかなり近い部分があります。
OpenClawは自由度が高い一方、Gatewayの運用、モデル選択、接続先、権限、セキュリティ、アップデートなども自分で考える必要があります。
私も以前この方向の環境を作りましたが、結局はChatGPT中心の構成へ戻しました。
かなり乱暴に言えば、OpenClawがDIY型なら、DotsはOpenAIによるマネージド型に近い。ただし、完全な互換や代替という意味ではありません。
そして、この「指示待ちから先回りへ」という流れはDotsだけではありません。
MetaのMuseは、過去に伝えた情報を使って頼んでいない提案まで行う方向を明確にしています。AnthropicのClaude Tagも、チームの文脈を持ち、よりプロアクティブに仕事を進める方向です。
GoogleのGemini Sparkも大きな目標をタスクとして持てますが、公開仕様ではTask、Schedule、Skillという「何を・いつ・どうやるか」の構造がかなり明確です。
各社の狙いは違いますが、2026年は「指示されたことを実行するAI」から「状況を見て先回りするAI」へ競争軸が動き始めた年なのかもしれません。
効率家ラボなら「記事ネタ監視」を任せてみたい
では、実際にDotsを使えるなら何を任せるか。
最初に試したいのは、記事ネタの監視です。
今の私は、面白いニュースや新サービスを見つけると、「これ記事になる?」とChatGPTへ相談しています。そこから既存記事やGitHub Issueとの重複を確認し、記事にするか判断します。
ここにはまだ人間がかなり介在しています。
たとえば、
「毎朝8時にAIニュースを3件集めて」
なら、今の自動化でもかなりできます。
でも私がDotsに期待しているのはそこではありません。
「効率家ラボにとって記事化する価値のある変化を見ておいて」
という仕事を持たせたい。
すると理想は、
関連情報を確認する
↓
サイトにとって重要か判断する
↓
既存記事や進行中Issueと重複していないか確認する
↓
重複なら捨てる
↓
新規性があれば記事候補として整理する
↓
人間には判断が必要な候補だけ持ってくる
という流れです。
私が減らしたいのは、情報収集そのものより「これは見るべきか」「これは記事にするべきか」を毎回考える負荷です。
ここまで任せられるなら、単なる自動化とはかなり違います。
Dotsが仕事を見つけ、Codexが実行する未来
さらに面白いのは、DotsとCodexを組み合わせられることです。
たとえばブログ運営の自動化で、同じエラーが何度も発生していたとします。
従来なら、
私がエラーに気付く
↓
状況を調べる
↓
恒久対応が必要か判断する
↓
Codexへ修正を頼む
となります。
Dotsが本当にプロアクティブに機能するなら、
Dotが運用状況から問題を認識
↓
単発エラーではなく恒久対応が必要と判断
↓
必要ならCodexへ原因調査・修正タスクを作成
↓
Codexがrepoを修正
↓
結果を人間が確認
という分担が考えられます。
もちろん、実際にどこまで自律的に判断できるかは使ってみないと分かりません。
ただ、ここまで来るとDotsは単なる「高性能なChatGPT」ではありません。
複数のAIやツールへ仕事を振るマネージャーに近い存在です。
プロアクティブなAIほど「どこまで任せるか」が重要
一方で、プロアクティブなAIには当然リスクもあります。
メール、ファイル、ブラウザ、各種サービスへアクセスするAIが、自分から状況を見て判断するほど、誤判断したときの影響も大きくなります。
ここで重要なのは、「プロアクティブ=何でも勝手にやる」ではないことです。
私が期待するプロアクティブさは、
何が重要かを判断する
次に必要な仕事を考える
必要なら人間や別のAIへ仕事を渡す
ところです。
一方で、外部への公開、メール送信、データ削除、重要な設定変更まで無条件に自動化したいわけではありません。
DotsのCustom Rulesでは、確認せず実行する操作、事前に依頼していれば実行する操作、実行前に確認する操作、人間へ引き継ぐ操作、といった境界を設定できます。
私がブログ運営で使う場合も、
調査
分析
重複確認
候補化
はかなり任せる。
一方で、
公開
外部送信
削除
重要な設定変更
は人間の確認を残す。
自律性が高くなるほど、「何を任せないか」を決めることも重要になると思います。
月80ドルで買いたいのは「自動化」ではなく「判断負荷の削減」
ここで結局、料金の話に戻ります。
私がDotsを使うためにPlusからProへ上げる場合、差額は月80ドルです。
では月80ドル払って何が減れば納得できるのか。
ニュースを取得する回数ではありません。
定期タスクを動かした回数でもありません。
見たいのは、
人間が「次に何をするか」を指示した回数
人間が監視対象を追加した回数
Dots側から有用な提案が出た回数
Dotsが次のタスクまで作れた件数
不要な提案や誤判断
人間が最終確認だけで済んだ件数
実際に減った時間
です。
すでに今のブログ運営は、ChatGPT、Codex、GitHub、Apps Scriptなどでかなり自動化しています。
Dotsを追加した結果、「できることは増えたけど管理するAIも増えただけ」になったら本末転倒です。
逆に、私が毎回やっている「次は何を見る?」「これは対応する?」「誰に振る?」という小さな判断が減るなら、月80ドルの意味はかなり変わります。
1カ月試すなら、こう検証したい
今すぐProへ上げるつもりはありません。
ただ、Dotsが自分の環境で使えるようになったら、1カ月限定でProへ上げて試すのはかなり面白いと思っています。
そのときは単に「Dotsを使ってみた。すごかった」では終わらせません。
まず「効率家ラボの記事ネタを継続して見ておく」という仕事を1つ持たせます。
そして、
有用な記事候補を何件見つけたか
私から追加指示した回数
Dots側から提案した回数
次のタスクまで自分で作れた件数
誤検知や不要な提案
人間による修正量
人間が確認だけで済んだ件数
従来より減った時間
月80ドルの追加料金に見合ったか
を記録します。
特に見たいのは、単純な作業時間だけではありません。
「次に何をすべきか考える」という細かい判断がどれだけ減ったかです。
これなら、「AIを1人増やしたら本当に仕事は減ったのか」をかなり具体的に検証できます。
OpenClawと比較して、「自分で常駐AI環境を作らなくても、Dotsで十分だったのか」も改めて見てみたいところです。
まとめ:Dotsは「新しいAI」より「AIの新しい役職」かもしれない
最初はペットが気になって調べ始めたDots。
調べてみると、ペットより常駐AIの方が面白かった。
さらに調べてみると、「常駐すること」自体も本質ではないように見えてきました。
クラウドで長時間動く。
定期的に処理する。
イベントを監視する。
それだけなら、すでにできる仕組みがあります。
Dotsで面白いのは、人間が「次に何をするか」を全部決めなくてもよくなり始めたことです。
ChatGPTが相談相手。
Workが幅広い実作業。
Codexが技術系の実行担当。
OpenClawが自分で作る常駐AI基盤。
そこへDotsが、状況を見て仕事を見つけ、必要な担当へ振り分ける役として加わった。
だから私には、Dotsは「新しいAI」というより、AIに新しい役職が増えたように見えます。
執筆時点ではまだ未使用なので、実際にどこまで先回りできるかは分かりません。
だから判断も変わりません。
Dotsはかなり気になる。でもDotsのためだけにPlusからProへはまだ上げない。
本当に見たいのは、「自動化できることが増えたか」ではなく、「自分が次の仕事を考える回数が減ったか」です。
……まあ、試すとき最初にやるのは、たぶんペット選びなんですけど。

