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バカップル全国珍道中 〜それでも会いに行く理由〜

チビキャラの銀髪少年とピンク髪ツインテールの少女が日本地図を背景に並び立ち、飛行機や新幹線、船や寺などの旅モチーフが描かれた賑やかなイラスト。 ゲームで出会った夫婦の物語
チビキャラの2人が日本全国を旅する様子をレトロポップに描いた、遠距離恋愛エッセイのビジュアル版。

付き合い始めて、すぐ遠距離。なのに旅行三昧。

202X年の夏、僕たちはゲームで知り合ってリアルで付き合い始めたばかり。
しかも遠距離。会うには、飛行機か新幹線、あるいは長時間の高速ドライブ。
だが、僕たちは2ヶ月ごとに会っていた。

まるで「デートするために生きてる」みたいな日々だった。

そうだ、デートに行こう

初めて会った翌日はお台場デート。観覧車にも乗ってみた。
サプライズでZARAで誕生日プレゼントにネクタイを買ってもらった。
思い出の場所だったけど今はもう閉店していて時の流れを感じて少し寂しい。

今となっては日常のねぎし。二人で初牛タン定食を食す。もちこ感動して今後定番となる。

その日の夜は彼女の親が来る予定だったのでアパホテルを取っていた。結局親はすぐに帰っちゃったので、「せっかくだから泊まろっか」ということで二人で泊まった。ちゃんと二人分で予約してた。

その後も毎日「おはよう」「おやすみ」の電話を続けた。遠距離だったけど、あまり寂しさは感じなかった。僕の出張が多かったこともあり、ちょくちょく東京に行けたし、何よりもゲームとDiscordの存在が大きかった。

見送った飛行機とコロナの海、そして旅芸人との予感

7月の東京で初めて会う数日前に遡る。

「ねえ、北海道と沖縄、どっち先に行く?」

そんな言葉が飛び交ったのは、まだリアルで会う前。勢い任せでExpediaから沖縄行きの航空券を予約した僕たちは、今思えば“恋の燃料”をどこにでも投下していた気がする。

そして、東京で初めて出会ったその帰り道、もちこが言った。

「沖縄旅行、楽しみだね。でも私、雨女だからな〜」

まさか、そのフラグがここまで強烈に回収されるとは思わなかった。

乗り遅れた飛行機、そして焦るふたり

沖縄行きの当日。都内から空港へ向かう電車の中で、事件は起きた。

「え、これって分離する電車だったの!?」

乗り遅れた。

2人して電車の座席で呆然としながら、次の便を探す。もちこは若干パニック気味だったけど、僕が「大丈夫、まだ間に合う」と言って手配した。珍しく、僕が主導権を握った。

落ち着いた車内で、ぽつり。

「今頃、私たちが乗るはずだった飛行機が沖縄に向かってるんだね」

そのセリフに、なんだか映画の一場面みたいだねと笑い合ったけど、どこか悔しさも混ざっていた。

着いたその日が、緊急事態宣言

沖縄に着いた瞬間、スマホに飛び込んできた通知。

「本日より沖縄県、緊急事態宣言発令」

閉まっていた美ら海水族館。パイナップルパークだけが稼働中。そして、台風接近。

それでも懲りずに僕らは、レンタカーを借りて海へ向かった。暴風が吹き荒れるなか、GoProで波と戯れる二人。何が楽しいって、予定通りにいかないことすら、今はちょっとした冒険に思えた。


四国一周、うどんと温泉と“心地いいズレ”の旅

「次、四国一周しない?」

沖縄旅行から帰ってきた翌朝。もちこがそう言った。

今度はノリじゃなくて、少しだけ計画も立てた旅だった。とはいえ、ざっくりとしたルートと行きたい場所をスマホのメモに並べた程度。あとは現地で決めよう——相変わらず“旅芸人”スタイルは健在だった。

香川:うどんラリー、そして道後温泉の悲劇

四国へは、淡路島経由で上陸。最初は香川へ。ここではとにかくうどん。うどん。うどん。

朝も昼も夜もうどん。5軒はしごして、最後は「もうしばらく見たくない」と2人で言い合った。

うどんの後は、父母ヶ浜。水鏡のような海辺で“映え写真”に挑戦するも、上手く光が調整できず撃沈。でもそれもまた、もちこの「こうなっちゃった〜」という笑い声で帳消しになる。光すら味方につける、そんな人だ。

夜、宿の近くで入った焼き鳥屋が最高だった。カリッカリの皮、しっとりの肝。観光よりも、こういう“当たり”が旅の醍醐味なんだと感じた。

愛媛:2時間待ちの道後温泉と、口論未満のズレ

翌日は愛媛。深夜に車で到着し、翌朝はもちこのリクエストでタオル博物館へ。タオルなんて興味ない……と思っていたら、意外と面白かった。

次に向かったのは、憧れの道後温泉。

「雰囲気がレトロで素敵なんだよ~」と彼女が言うので張り切って向かったのに、着いてみたら入り口には長蛇の列。待ち時間、まさかの「2時間以上」。

「えっ……嘘でしょ?」
「なんで事前に調べといてくれなかったの?」

その一言に、ちょっとだけムッとした。

「……でもまあ、混んでるってことは人気ってことだしね」

僕はそれだけ言って、列から離れた。

近くの食堂で鯛めしを食べ、コンビニで道後プリンを買って、ホテルで静かに食べた。

「なんか、予定通りにいかないね」
「でも、それが私たちらしくていいかも」

プリンの甘さが、不思議とその一言を包み込んでくれた。

居酒屋とゲームの夜──何もしない日が愛おしい

その次の日は二人疲れてホテルでゴロゴロして一緒にゲームを始めた。
「早くこっちきて!」
「ここはどう攻めるの?」

息が合わない。でも、そこが笑える。

夜になって近所をふらっと歩き、入ったのは観光客ゼロの居酒屋。カウンターに座ると、隣のおっちゃんが声をかけてきた。

「カップルか?ええなあ!」

陽気でおしゃべり好きなおっちゃんは、次々と地元の酒を勧めてきて、最終的には全部奢ってくれた。

「こんな美人の彼女、逃したらあかんで!君はもっと頑張れ!」

——俺? 頑張れ?

その場では照れ笑いして受け流したけど、もちこはニコニコしながらおっちゃんと乾杯し続け、気づけば完全にベロベロ。店を出る頃には千鳥足で、僕は必死で支えながらホテルまで連れて帰った。

「うぅ…頭ぐるぐるする……」

でもその帰り道、2人して爆笑していた。こんな旅の夜も悪くない。

旅旅旅——全部、また会いたいに繋がってる

翌日は瀬戸大橋を越えて、広島を経由して帰宅。

それで終わりじゃなかった。

翌年の春には神戸デート、USJ。GWには川越・宇都宮餃子ツアー。初夏は京都、7月は北海道一周。

どれもが「ハプニングつきデート」だった。でも、全部笑い話になった。

彼女の行動は、いつも僕の想定を超えてくる。

だけど、それが嫌じゃない。むしろ「次は何が起こるんだろう」と楽しみに思ってる自分がいる。

予測不能な旅芸人と過ごす、計画不明の人生。

完璧じゃない。それでいい。

また、どこかへ行こう。次の“ズレ”を楽しみに。

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