ゲームで結婚した二人、数年後パリにいた。

ゲームで出会い結婚した夫婦がヨーロッパ新婚旅行でパリの凱旋門を見上げるイラスト

この記事は「ゲームで出会った夫婦の物語」第5章です。

2024年3月。

パリの駅から地上に出ると、目の前にライトアップされた凱旋門があった。

「うおおおお」「すごい!!」

たぶん、二人ともそんな感じだった。

写真では何度も見たことがある。

でも、本物が目の前にある。

「本当にパリに来たんだ」

と、一気にテンションが上がった。

その隣にいたのは妻。

数年前まで、スマホゲームの中でしか一緒にいなかった人である。

2020年。

僕たちはゲームの中で結婚した。

そこから遠距離恋愛をして、同棲して、現実世界でも結婚した。

そして数年後。

その相手と、新婚旅行でヨーロッパまで来ていた。

人生、どうしてこうなった。

前章:バレてたのに、ボロ泣きしてくれた。チャペル付きレストランでプロポーズした日の話。

「いつか行きたい」が、本当に行く予定になった

新婚旅行では、パリ、ヴェネツィア、ローマを巡った。

なかでもパリは、付き合い始めた頃から妻と行きたいと話していた場所だった。

妻が好きなDIORをはじめ、フランスのブランドを見て回る日も作った。

そして、付き合った直後くらいから二人で話していた場所がもう一つある。

モン・サン・ミシェル。

当時はヨーロッパ旅行の予定なんて何もなかった。

ただ、

「いつか行ってみたいね」

と話していただけだった。

その「いつか」が、本当に旅程に入っている。

実際にモン・サン・ミシェルまで来て、妻も喜んでいた。

昔の自分たちが今の状況を見たら、たぶん結構驚く。

何より、

ちゃんと結婚している。

ちなみに新婚旅行の予約では、備考欄があればとにかく「Honeymoon」と書いた。

使えるカードは使う。

せっかくのハネムーンである。

パリでは途中でホテルも移動し、妻が選んだ少し良いホテルにも泊まった。

もちろん、そこでも「Honeymoon」と書いた。

旅行先では、なぜかディナークルーズを選びがちな僕たち。

今回もパリで乗った。

そこで撮ってもらった二人の写真は、今も残っている。

一方で僕は、ヨーロッパまで来ても普通に為替を見ていた。

妻に報告するたび、

「旅行中は円高になる気がする」

と謎の自信を見せる。

そして記憶では、本当にほんのり円高になった。

支払いではSony Bank WALLETにもかなり助けられた。

ロマンチックな新婚旅行をしながら、為替も見る。

この辺は、たぶん僕らしい。

パリでウェディングフォトまで撮っていた

今回の新婚旅行では、パリでウェディング前撮りもした。

エッフェル塔やルーヴル美術館、セーヌ川周辺などを背景に写真を撮る。

朝は早い。

そして僕たちは二人とも朝が弱い。

つらい。

しかも少し肌寒い。

ただ、早朝だからこそ人が少なく、撮影しやすい場所も多かった。

結果的にはかなり楽しかった。

エッフェル塔を背景にした写真もたくさん残っている。

でも、新婚旅行中にエッフェル塔そのものには行っていない。

写真にはめちゃくちゃ写っているのに。

そして完成した写真を見ると、妻のソロショットは多い。

僕は少ない。

まあ、そういうものである。

数年前までゲームの画面越しに話していた相手と、パリでウェディング姿になっている。

冷静に考えるとかなり不思議だ。

でも、その時の僕たちは、

「寒い」

とか、

「眠い」

とか、

そんなことを言っていた気がする。

前撮り自体の詳しい話は別の記事に書いている。

新婚旅行は、そんなに優雅でもない

写真だけ見れば、かなり優雅な旅行に見える。

現実はそうでもない。

パリの地下鉄では、スリらしき若い子たちに狙われた。

電車が到着すると、一緒に乗り込んでくる。

そして電車が出発する前に降りていく。

妻はすぐに気づいてカバンを押さえていた。

僕は何も気づいていない。

妻に「スリやで!」と言われて、

「え、そうなん?」

となった。

完全に無防備。

ただ、その時の僕のカバンの中身はモバイルバッテリーくらいだった。

スリ側も、

「こいつ、何も持ってないな」

と思ったのかもしれない。

結局、何も盗られなかった。

防犯意識は、明らかに妻の方が上である。

ヴェルサイユ宮殿でも、順調とは言い難かった。

向かう途中の電車では切符の範囲をちゃんと理解しておらず、乗り越しで注意された。

さらに宮殿の入場時間もギリギリ。

「間に合わん」

となって、二人で走る。

優雅な宮殿へ全力疾走する新婚夫婦。

なんとか間に合ったと思ったら、今度は庭が広い。

見るものが特にないところまで、とにかく歩く。

きれいなのだけれど、本当に広い。

最終的には二人ともへとへとになった。

「なんでこんなに歩く必要があったんだろ?」

新婚旅行というと優雅なイメージがある。

実際は、だいたい歩いていた。

ゴンドラに乗って、イカスミパスタを食べる

パリを出たあとは、ヴェネツィアへ。

ゴンドラにも乗った。

マルゲリータとイカスミパスタも食べた。

こうやって書くと、驚くほど新婚旅行っぽい。

数日前には地下鉄でスリに狙われていたのに。

マルゲリータもイカスミパスタもおいしかった。

特にイカスミパスタは、今でも覚えている。

旅の細かい記憶は少しずつ薄れていく。

それでも、ゴンドラに乗ったことや、何を食べたかみたいな断片は意外と残っている。

写真を見れば、忘れていたことまで戻ってくる。

妻は歴史に感動し、僕は鳩に怒り狂ってた

最後はローマ。

ヴァチカン市国にも行った。

ヴァチカン自体には入れた。

でも、ヴァチカン美術館には予約の関係で入れなかった。

「まあ、行けば何とかなるやろ」

は、海外では何ともならない。

思っていたより早く撤収することになった。

そしてコロッセオ。

ここは妻がかなり喜んでいた。

僕はあまり思い出したくない。

約2000年前、この場所で実際に剣闘士たちが戦っていた。

妻はその歴史を想像すると感動したらしい。

僕も、

「すごいな」

と思いながら歩いていた。

その時までは。

鳩にフンを落とされたのだ。

妻は古代ローマの歴史に思いを馳せている。

僕は怒りながら鳩のフンを拭いている。

同じ場所にいても、人はそれぞれ違う体験をするらしい。

新婚旅行を振り返って一番印象に残る話がこれなのも、どうかと思う。

でも、たぶん僕たちの旅行はそんな感じだった。

きれいな景色を見る。

ちょっと良いホテルにも泊まる。

ゴンドラにも乗る。

その一方で、スリに狙われたり、電車の切符で怒られたり、鳩に怒ったりもする。

それでも全部ひっくるめて楽しかった。

数年前まで、画面の向こうにいた人

振り返ってみると、かなり王道のヨーロッパ新婚旅行だった。

でも、僕に残っているのは「どこへ行ったか」だけではない。

パリに着いて、二人で凱旋門を見上げたこと。

昔「行ってみたいね」と話していた場所に、本当に来たこと。

朝が弱い二人で、パリの街をウェディング姿で歩いたこと。

そして、トラブルも笑い話も含めて二人で旅したこと。

数年前まで、僕たちはゲームの中でしか一緒にいなかった。

ゲームの中で結婚して。

現実で会って。

一緒に暮らして。

現実でも結婚した。

そして気がつけば、ヨーロッパまで一緒に来ていた。

別にその瞬間、

「ここまで来たんだな」

なんて格好いいことを考えていたわけではない。

たぶん普通に、

「次どこ行く?」

とか、

「腹減った」

とか言っていたと思う。

それくらい、もう一緒にいることが普通になっていた。

昔の自分にこの旅行の写真を見せても、たぶん信じない。

ゲームで出会った人が妻になっているだけでも十分おかしい。

その妻とパリでウェディングフォトを撮って、

ヴェネツィアでゴンドラに乗って、

ローマで鳩のフンをくらっている。

人生は分からない。

そしてヨーロッパから帰国。

これで僕たちの長い「結婚イベント」も、ようやく一段落。

……ではなかった。

まだ、本番が残っている。

次は赤坂での結婚式。

ゲームの中から始まった僕たちの結婚の話は、ようやく現実の結婚式へ向かう。


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