里帰り出産をした。
妻が実家へ帰り、出産前には僕も合流した。
子どもが生まれてからは僕も育休を取り、しばらく妻の実家で一緒に育児をした。
ここまでなら、よくある里帰り出産の話かもしれない。
ただ、我が家の場合はその後が長かった。
育休が終わると、僕だけ先に仕事へ戻った。
妻と子どもはそのまま実家に残った。
そして家族3人で本格的に暮らし始めたのは、新居へ入居するタイミングだった。
結果として、かなり長い里帰りになった。
とはいえ、実家が快適すぎて「もうちょっといよう」「やっぱりもう1か月」とズルズル延びたわけではない。
途中で新居を購入することを決めた時点で、「妻と子どもは、旧居へいったん戻らず、新居に入れるまで実家にいよう」という方針にした。
では、なぜそこまでしたのか。
終わった今、その判断は正解だったのか。
今回は、里帰り中の育児そのものではなく、僕たちが「長期里帰り」という生活を選んだこと自体を振り返ってみたい。
そもそも、旧居では3人暮らしが厳しかった
長期里帰りを理解するうえで、一番大きいのが以前住んでいた家だ。
約30㎡の1DK。
一応1DKなのだが、僕たちはかなり1Rに近い使い方をしていた。
夫婦2人で暮らす分には、それほど問題なかった。
ところが、ここへ赤ちゃんが一人加わる。
ベッド、ベビー用品、おむつ、ミルク、服、哺乳瓶、おもちゃ、さらにベビーカーまで増える。
赤ちゃん本人は小さいのに、付属品は全然小さくない。
家族3人で暮らすことを具体的に考え始めると、さすがに無理が出てきた。
妻はかなり早い段階から、「あの家で子育てするのは絶対無理」という立場だった。
僕は最初、「本当にそこまで無理かな?」とも思っていた。
30㎡あれば、工夫すればなんとかなるんじゃないか。小さい子どもなら、まだそんなに場所も取らないんじゃないか。
そんな気持ちも多少あった。
ただ、実際に子ども用品が増えていくのを見ていると、妻の言うことも分かってきた。
単に寝る場所が確保できるかではない。
毎日ミルクを作り、おむつを替え、子どもを寝かせ、大量の荷物を置き、大人2人も生活する。
そこで初めて、「住める」と「子育てしながら暮らせる」は違うと思うようになった。
もちろん30㎡で子育てしている家庭はいくらでもある。
だから「30㎡では子育てできない」という話ではない。
我が家の家具配置や生活スタイルまで含めると、僕たちには厳しいと判断した、という話だ。
その結果、新しい家を探すことになった。
新居を買うなら、旧居へ戻る意味はあるのか
新居購入を決めたところで、次の問題が出てきた。
新居にはすぐ入れない。
それなら妻と子どもはどうするか。
一度、東京の旧居へ戻る。数か月そこで暮らす。そして新居完成後に、もう一度引っ越す。
これも選択肢ではあった。
ただ、妻は旧居へ戻ること自体にかなり否定的だった。
もともと「子どもと暮らすのは無理」と考えている家へ、わざわざ数か月だけ戻ることになる。
しかも、その後には赤ちゃんを連れてもう一度引っ越しが待っている。
僕も最初は多少疑問を持ったものの、最終的には納得した。
それなら、妻と子どもは実家で生活を続ける。僕は仕事へ戻る。そして新居に入れるタイミングで家族3人が合流する。
その方が現実的だった。
もし新居へもっと早く入居できていたなら、妻子もその時点で戻っていたと思う。
つまり我が家の里帰りが長くなった最大の理由は、「実家に長くいたかったから」ではなく、「家族3人で暮らす次の家が完成するまで待ったから」だった。
育休中は、僕も妻の実家で暮らしていた
ここも少し誤解されやすいところだ。
長期里帰りとはいっても、最初からずっと妻と子どもだけが実家にいたわけではない。
僕も出産前に妻の実家へ行き、出産後は育休を取った。
前後を含めると、約3か月は僕も一緒に生活している。
新生児期には夜間のミルクやおむつ交換もしたし、午前中は僕が子どもを見て、妻に寝てもらうこともあった。
今回の話で重要なのは、その生活が僕の仕事復帰で変わったことだ。
育休が終われば、僕は仕事へ戻る必要がある。
一方、妻と子どもは新居完成まで実家に残る。
ここから、家族が離れて暮らす期間が始まった。
長期里帰りの最大のメリットは、やはり「人」だった
長期間実家にいるメリットは何だったか。
妻側から見れば、やはり親族のサポートが大きかったと思う。
妻自身から聞いている範囲でも、実家にいることで周囲に頼れる環境があった。
赤ちゃんを育てながら、家事も食事も全部一人で回す必要がない。
僕が仕事でいない平日に、完全に一人で抱えなくてもいい。
旧居へ戻っていた場合、僕が出勤している間は基本的に妻と子どもの2人になる。
実家なら、周りに大人がいる。
実際に毎分毎秒誰かが育児してくれるという意味ではない。
それでも、「何かあれば頼れる人が近くにいる」という違いは大きかった。
僕たちは里帰り先で犬と赤ちゃんが一緒に暮らす問題など、実家だからこその悩みにも遭遇した。その話は義実家で犬と赤ちゃんが暮らした記事に残している。
それでも総合的には、子育てするためのマンパワーという点で実家のメリットは大きかったと思う。
金銭面でも、想像以上に助けてもらった
僕側から見た長期里帰りのメリットには、費用面もある。
妻と子どもが実家にいる間、当然ながら僕たちだけですべての生活費を負担していたわけではない。
ただ、単に食費や光熱費が浮いたという話だけではない。
大きかったのはベビー関連だ。
ベビーカー、チャイルドシート、ベッド、服、哺乳瓶。
ほかにも細かいものまで含めると、出産後には驚くほどいろいろ必要になる。
それらを親族にかなり支援してもらった。
第一子なので僕たちには何も蓄積がない。
ゼロから全部買えば、それなりの金額になる。
長期里帰り中は育児そのものだけでなく、こうした初期装備についてもかなり助けてもらった。
親族のマンパワーと物的支援。この2つがあったからこそ、長い里帰り生活が成立した面は大きい。
もちろん、いいことばかりではなかった
一方で、長期間離れて暮らすデメリットもはっきりしている。
妻側から見れば、僕が日常的に育児へ参加できなくなったこと。
これが一番大きかった。
育休中は同じ家にいるので、ミルクも風呂もおむつも担当できた。
でも東京へ戻れば、それはできない。
実家に親族のサポートがあるとはいえ、それと夫が育児に参加することは同じではない。
僕にとって一番大きかったのは、子どもの成長を直接見られなかったこと。
写真は送ってもらえる。「みてね」でも見られる。Discordでビデオ通話することもできる。
それでも、実際に一緒に暮らすのとは違った。
気づけば寝返りができるようになっている。離乳食が始まっている。できなかったことが、いつの間にかできている。
育休中なら、「そろそろできそう」「今日ちょっとできた」「できた!」という途中経過まで見られた。
離れて暮らしていると、届くのはどうしても結果が中心になる。
これは長期里帰りの明確なコストだったと思う。
ただ、「妻子に会えなくて毎日つらくて仕方がなかった」というほど単純でもない。
一人暮らしには自由もあった。
自分の時間で食事をして、寝て、仕事へ行く。
人間、意外とその生活にも適応する。
そのあたりの複雑な感覚は男性育休の記事に書いたので、ここでは「離れて暮らす=全部つらい」と美化しないでおきたい。
それでも、旧居へ戻す選択はしなかったと思う
終わった今、「長すぎたかな」と思うか。
僕の答えは、まあ、この選択でよかったと思う。
ものすごく積極的に「長期里帰り最高!」と勧めたいわけではない。
むしろ家族が離れて暮らさなくて済むなら、その方がシンプルだと思う。
ただ、当時の我が家について考えると、他にあまり良い手段が見つからない。
旧居は僕たちにとって子育てしやすい環境ではなかった。
新居はまだ完成していない。
僕は仕事へ戻らなければならない。
妻が旧居へ戻れば、日中は赤ちゃんとほぼ二人。
実家なら親族に頼れる。
この条件を並べれば、妻子が新居完成まで実家に残るという判断はかなり自然だった。
長期里帰りをしたかったというより、当時の条件で一番現実的な生活を選んだら、結果として長期里帰りになった。
という感覚の方が近い。
新居に移って初めて「里帰り終了」になった
そして新居への入居時期が来た。
妻と子どもが戻り、ようやく家族3人で暮らす生活が始まった。
ただし、ここから先は別の話だ。
実際に3人で生活してみると、お風呂、寝かしつけ、日中のワンオペ、僕の通勤時間など、里帰り中とはまったく違う課題が出てきた。
その話は「里帰りが終わった。0歳児との3人暮らしを始めて分かったこと」にまとめている。
今回改めて思うのは、里帰りが終わるというのは、単に妻子が夫のいる場所へ戻ることではなかった。
我が家の場合は、「家族3人で生活できる環境がようやく整った」という意味だった。
だからこそ、新居完成が里帰り終了のタイミングになった。
第二子でも里帰りするか
では、もし第二子ができたらどうするか。
たぶん里帰り自体はすると思う。
ただし理由は今回とは違う。
今の家なら、子どもが2人になってもスペース的にはおそらく大丈夫だ。
第一子の時のように、「家が狭いから戻れない」という問題はない。
次に問題になるのは、マンパワーだと思う。
赤ちゃん一人を一人で見るのも大変だ。
第二子なら、そこに上の子もいる。
妻が乳児と上の子を一人で見る時間が長くなるなら、かなりきついと思う。
そこで重要になるのが、僕がどれくらい育休を取るかだ。
僕が長く育休を取り、自宅で一緒に育児できるなら、第一子の時とは条件が変わる。
逆に早く仕事へ戻るなら、実家のサポートはかなり大きい。
第一子では住宅事情が長期里帰りの大きな理由だった。
第二子なら、おそらく住宅ではなくマンパワーが判断材料になる。
同じ「里帰り出産」でも、家族の状況が変われば理由も期間も変わるのだと思う。
里帰り出産は「何か月が正解」ではなかった
里帰り出産について調べると、「いつまで実家にいる?」「産後1か月で戻る?」「長すぎる里帰りはよくない?」という話が出てくる。
僕たちも結果だけ見れば、かなり長い里帰りになった。
でも、終わった今は「○か月なら正解」という話ではなかったと思っている。
我が家に足りなかったものは、最初は家だった。
30㎡の旧居では、少なくとも僕たち夫婦が望む形で3人暮らしを始めるのは難しかった。
新居ができるまでの間、それを補ってくれたのが妻の実家だった。
そして次に子どもが増えるなら、足りなくなるのは家ではなく人手かもしれない。
里帰りするか。いつ戻るか。何か月が適切か。
その答えを期間だけで決めるより、「今、この家庭には何が足りていないのか」を考える方が実際には大事なのかもしれない。
我が家の場合、第一子の答えは「家とマンパワー」だった。
だから妻子は新居完成まで実家に残った。
離れて暮らす期間は長くなった。子どもの成長を見逃したこともある。
それでも、今もう一度同じ条件に戻ったとしても、おそらく同じ選択をする。
そして第二子になれば、また条件を並べ直して考えると思う。
家族が一人増えるだけで、生活の前提条件は簡単に変わる。
里帰り出産もたぶん同じだ。
最初から正解の期間があるのではなく、その家庭がその時点で一番回る場所を選ぶ。
少なくとも我が家にとっては、それが長期里帰りだった。

