男性育休を取った。
ミルクも作った。おむつも替えた。風呂にも入れた。
夜中は妻と交代で子どもを見て、午前中は僕が担当して、妻には昼くらいまで寝てもらった。
妻が美容院やネイルへ行く日は、一人で子どもを見ることもあった。
だから育休が終わる頃には、それなりにこう思っていた。
「俺、結構育児やったな」
実際、役には立っていたと思う。
ところが、それから仕事へ戻った。
妻と子どもは里帰り先に残り、僕だけが東京へ戻った。
昨日まで毎日見ていた子どもに、突然ほとんど会わなくなった。
さらに数か月後、今度は家族3人で暮らし始めた。
そこで改めて思った。
育休を取ることと、日常の中で父親になっていくことは、似ているようで少し違う。
育休は間違いなく取ってよかった。
でも父親になるというのは、育休を取得したという一回のイベントではなく、その後の日常の方がずっと長い話だった。
出産前は「自分は育休いらないかも」と考えていたらしい
以前の記事を読み返していて、自分でも少し驚いた。
出産前の僕は、
「自分は育休いらないかも」
と考えていたらしい。
完全に忘れていた。
なぜそう思っていたのか。
今振り返ると、おそらく一番大きかったのは収入だと思う。
仕事を休めば給料が減る。
育児休業給付があることは知っていても、実際にどれくらい受け取れるのかまでは最初よく分かっていなかった。
その後、制度を調べていくと、思っていたよりも育休中の収入を支える仕組みがあることが分かった。
制度そのものについては、出産前に書いた育休をいつ・何か月取るか悩んでいた頃の記事にまとめている。
今回書きたいのは、その計画を実際にやった後どうだったかだ。
11月末、妻の実家へ行った
出産予定日より少し前、11月末から有休を使って妻の実家へ行った。
その後、出生時育児休業、いわゆる産後パパ育休と通常の育児休業を続けて取得した。
前後を含めると、僕は11月末から2月末まで妻の実家で生活した。
結果として、出産直後のかなり濃い時期を一緒に過ごすことになった。
そして、生まれて最初の1か月。
これは普通にきつかった。
最初の1か月は、夫婦2人でもきつかった
新生児は数時間おきにミルクを飲む。
おむつを替える。
寝たと思ったら起きる。
うなる。
吐き戻す。
なぜ泣いているのか分からない。
当時は妻と夜を交代制にしていた。
一緒に起きるのではなく、片方が担当している間に、もう片方はできるだけ寝る。
僕の担当時間なら、僕がミルクをあげて、おむつを替えて、寝かせる。
この頃の様子は、生後19日目に書いた新生児期の記事にも残っている。
2か月くらいになると、息子も少しずつ夜に長く寝るようになった。
この変化はかなり大きかった。
睡眠が取れるようになるだけで、人類はだいぶ人間に戻れる。
午前中は僕が担当。妻は昼まで寝る
育休中、僕がかなり意識していたのが午前中だった。
妻はとにかく朝に弱い。
もともと強くないのに、新生児育児で夜も細切れ睡眠になっている。
なので午前中は基本的に僕が子どもを見るようにしていた。
妻にはそのまま寝てもらう。
12時くらいまで寝られる日もあった。
これは結構大きかったと思う。
僕自身も夜の育児をしているので眠い。
でも、午前中を僕が引き受ければ、少なくとも妻にはまとまった睡眠時間を作れる。
育児というと、ミルクを何回あげた、おむつを何回替えた、みたいな作業数で考えがちだ。
実際にやってみると、相手が何時間連続で寝られるかの方が重要だったりする。
僕は風呂も担当していた。
妻が美容院やネイルへ行く日は、その間は僕一人で子どもを見る。
育休中については、「妻がいないと何もできない」という感覚はほとんどなかった。
今思うと、この頃の方がむしろ楽だった部分もある。
なぜなら、まだ「ママじゃないと嫌」がなかったからだ。
現在はこれがある。
父、普通に敗北する。
「仕事してる方が楽」は、ちょっと分かる
育休を取ってみて、「仕事している方が楽なんじゃないか」と思う瞬間は、なくはなかった。
赤ちゃんを見ている間は、基本的にずっと気にしていないといけない。
その間、自分がやりたいことはなかなか進まない。
仕事なら、少なくとも仕事だけしていればいい時間がある。
育児はそうはいかない。
ただ、それ以上に育休中でよかったと思うのは、子どもの変化を近くで見られたことだ。
昨日できなかったことが、ある日突然できる。
少し表情が変わる。
音に反応する。
笑う。
動く。
子どもの成長は、「来月からこの機能を実装します」と予告してくれない。
勝手にアップデートされる。
そして、その瞬間に立ち会える。
これは育休を取らなければ、今よりずっと少なかったと思う。
そして育休が終わった
その生活も終わった。
僕は仕事へ戻ることになった。
妻と息子はそのまま里帰り先。
僕だけ東京へ戻った。
一人暮らしは気楽だった。
自分の好きな時間に飯を食べられる。
好きな時間に寝られる。
誰かを起こさないように静かにする必要もない。
圧倒的自由。
ただし、息子に会えない。
これは普通に寂しかった。
仕事復帰については、「久しぶりの仕事、頑張るぞ」とはならなかった。
普通にだるかった。
しかも復帰した瞬間からトラブル対応だった。
育休明け初手、トラブル。
会社はもう少しリハビリ期間という概念を導入してほしい。
「育休に戻りたい」と思った。
写真では見ている。でも、いつの間にか成長している
離れている期間、妻とはDiscordで時々ビデオ通話をしていた。
写真は「みてね」で共有してもらっていた。今はセットログも使っている。
なので、まったく子どもの様子が分からないわけではない。
それでも、実際に一緒にいるのとは全然違う。
いつの間にか離乳食が始まっていた。
いつの間にか寝返りに成功していた。
写真で見れば、「おお、できたんや」とは思う。
でも育休中は、その「できそう」「まだできない」「できた」の全部を目の前で見られた。
離れて暮らすと、「できた」という結果だけが届く。
この差は結構大きかった。
一方で、この時期に「父親なのに何もしていない。俺は何をしているんだ」と強く悩んだかというと、そこまではなかった。
仕事へ戻ったら仕事をする。
妻と子どもは妻の実家にいる。
そういう期間だった。
寂しいけど、一人暮らしは自由。
育児はしていないけど、仕事はしている。
案外、人間はその状況に普通に適応する。
父親の実感が強くなったのは「他に大人がいない時」だった
では、いつ父親になった実感が出たのか。
出産した瞬間か。
違う。
以前、立ち会い出産の記事にも書いたが、息子が生まれた瞬間も「うおおお、俺は父親だ!」みたいな感覚はなかった。
むしろ、「無事終わった……」という安堵感の方が強かった。
育休を取った瞬間でもない。
育児休業申出書を出したところで、父親レベルが1上がるわけではない。
今振り返ると、実感が強くなったのは、周りに他の大人がいない時だった気がする。
妻が出掛けて、自分一人で子どもを見る。
家族3人で旅行へ行く。
妻の実家ではなく、自分たちの家で3人で暮らす。
「困ったら誰かに任せられる」という状況ではなくなる。
その時、「自分もこの子を見る側なんだ」という感覚が強くなった。
育休中にも育児はしていた。
でも妻の実家には周囲に大人がいる。
現在の自宅には夫婦しかいない。
そこは結構違った。
今はむしろ「ママじゃないと嫌」が難しい
家族3人で暮らし始めてからは、また別の難しさが出てきた。
平日は僕が仕事へ行く。
その間、妻は一人で子どもを見る。
今、一番気になるのはここだ。
妻自身も育児にはかなり慣れてきたと思う。
昼間ならワンオペでもかなり回せるようになった。
それでも、毎日一人で見る時間が長いのは変わらない。
だから帰宅後は、僕がお風呂を担当している。
寝かしつけも練習中だ。
ただ、最近は明確に「ママじゃないと嫌」がある。
育休中にはなかった新要素だ。
昼なら僕一人でもなんとかなる。
夜はまだきつい。
これから減らしたいのは、妻にしかできない育児だと思っている。
何でも半分ずつやる必要はない。
でも、「妻がいないと詰む」はなるべく減らしておきたい。
現在の家族3人生活については、里帰りが終わって3人暮らしを始めた記事にもまとめている。
もう一度でも、たぶん同じくらい育休を取る
もしもう一度同じ状況になったらどうするか。
もっと長く取るか。
短くするか。
正直、そこまで明確な答えはない。
たぶん同じくらい取ると思う。
最初の1か月は、特に取ってよかった。
これはかなりはっきり言える。
新生児期を妻一人で見るのはきつい。
2人でもきつかった。
もちろん里帰り出産なら、実家のサポートがどれくらいあるかでも変わる。
家庭ごとに条件は違うので、「男性は絶対○か月取るべき」とまでは思わない。
ただ、自分の場合は取ってよかった。
理由は妻を助けられたことだけではない。
自分自身が、子どもが変わっていく時間を見られたからだ。
育休を取ったから父親になったわけではない
育休は大きかった。
ミルクの作り方を覚えた。
おむつ交換にも慣れた。
風呂に入れられるようになった。
一人でも子どもを見られるようになった。
妻を寝かせて、自分が午前中を見る日も作れた。
どれも今につながっている。
だから「男性育休に意味がなかった」なんてことは全くない。
ただ、育休を取得したことそのものが「父親になった証明」でもなかった。
育休が終われば仕事は始まる。
離れて暮らすこともある。
子どもはどんどん成長する。
昨日できた方法が突然通用しなくなる。
育休中には平気だったのに、今は「ママじゃないと嫌」と泣く。
そのたびに、また父親側もやり方を覚えていく。
たぶん父親になるというのは、そういう作業をずっと続けることなんだと思う。
これから男性育休を取る人に一つだけ言うなら
最後に、これから育休を取ろうか迷っている男性へ一つだけ言うなら。
嫁に一生「あの時、育休取らんかったよな」と言われたくなければ取った方がいい。
……というのは半分冗談として。
最初の1か月は本当に大変だった。
妻一人ではきつかったと思うし、2人でも普通にきつかった。
でも、育休の価値は「妻を手伝う」だけでもなかった。
その時期の子どもを、自分で見られる。
抱く。
ミルクを飲ませる。
眠らせる。
昨日できなかったことが今日できる瞬間を見る。
仕事へ戻った後になって、それが結構ぜいたくな時間だったと分かった。
育休には終了日がある。
でも父親には、今のところ終了日はない。
制度として育休を取ることより、その後の日常で育児を続ける時間の方が圧倒的に長い。
僕もまだ父親になって9か月ほど。
寝かしつけでは普通に母に負けている。
父親業、まだチュートリアル中である。

