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モデル彼女|自由すぎる彼女に振り回されて気づいたこと

モデル写真を手にしたポーズを決める女の子と、驚きながらも見守る男の子が描かれたかわいらしいイラスト ゲームで出会った夫婦の物語
モデル活動中の彼女と戸惑う彼氏。ゲーム婚シリーズ番外編を象徴するワンシーン。

モデル?まさかの一通のLINEから始まった衝撃

22021年の夏。猛暑とコロナ禍の鬱屈が続くなか、もちこから届いたLINEの通知に、俺は思わず二度見した。

「モデルの仕事始めることになったー!」

え?モデル?マジで?

もちろん、彼女が可愛いのは知ってる。でも、その可愛さを“世に出す側”になるなんて、完全に想定外。最初は素直に「すごいね!」とは言えなかった。

真っ先に出た言葉は、

「それ、詐欺じゃないよな?」
「撮影って……男多いよな?」

心配性な俺の悪いクセがフルスロットルで発動。もちこがどんな相手とどんな格好で撮られるのかが気になって、何度も「どんな人?」「場所はどこ?」と詮索した。今思えば、完全にめんどくさい彼氏だったと思う。もちこからは
「ちょ、だるっ。詮索やめろ〜」

と返ってきた。はい、自覚してます。俺、めんどくさい彼氏です。

でも驚きはそこでは終わらなかった。

自宅に届いた写真集と「私かわいいから」爆弾発言

数週間後、「じゃーん」と見せられたのは、なんと写真集
しかも、ちゃんと撮影・編集された本格的なやつ。表紙からしてプロっぽい。家に届いたそれは、5冊ほどあって、今も我が家の本棚にしれっと並んでいる(未だに販売はしてないらしい)。家に、俺の彼女の写真集が5冊あるという異常な状況。ちなみに販売はしていない。「記念用」らしい。

「なんで5冊もあんの?」と聞いたら、

「いや、ノリじゃん?ほら、私かわいいから♡」

とドヤ顔された。なるほど、無敵である。

しかも、聞くところによると、けっこう稼いでいたらしい。
SNSで自撮りを上げたり、撮影報告をしたりして、基本は“待ち”のスタイルだったけど、有名なカメラマンを紹介されたときはさすがに動いたらしい。

「ちょっとDM飛ばしたけど、営業ってめっちゃ疲れるんだけど」

なんて文句を言いながらも、しっかり案件を取ってくる。価格は安めに設定して、件数で稼ぐ作戦。意外と戦略家じゃん。

「え、それ俺より時給高くない?」みたいな冗談を言ったら、「まあ、夢ある世界だからね」と軽く返された。夢……。確かに。


メイド喫茶でも大活躍!?バーチャル接客の裏側

そんな華やかなモデル活動の傍らで、もちこはもう一つの“顔”を持っていた。

そう、メイド喫茶である。

「今どきメイドって流行ってんの?」と聞いたら、

「あんた、時代遅れすぎ」

と一蹴。今思えば、これはもちこの“照れ隠し”だったのかもしれない。

しかもコロナ禍真っ只中だったため、店はオンライン接客に完全移行。
Zoomで客と会話し、歌い、踊る。いわば“バーチャルメイド”。この新しさには正直、ちょっと感動すら覚えた。

もちこは歌とダンスが得意なので引っ張りだこだったらしく、ファン投票イベントにもノミネートされたりしてたらしい、でもある日そのメイドも辞めてた。
理由を聞いたら――

「色々忙しくなってきたし、まあ…気分って感じ?」

と笑っていたが、その背景には試験や実習など、学生としての現実的なプレッシャーもあったと、今では思う。


オンライン配信中に一度、地味な事件があった。

その日、俺はリビングの端っこでこっそりPC作業をしていたんだけど、もちこが突然口パクで「音出すな」のジェスチャー。よく見ると配信が始まっていた。

彼氏が隣にいるなんて知られたらイメージに関わる。
俺は咄嗟にノートPCを閉じ、魚類ばりの静寂でその場をやり過ごした。人間、緊張すると本当に音が消せるものなんだなと思った。


看護学生、声優の夢、そして現実とのギャップ

そんなこんなで、彼女はモデルとメイドを同時並行でこなしていた。
でも、当時のもちこにはもう一つ、大きな目標があった。

看護師になること。

そう、彼女は実は看護学生だったのだ。
あの頃は国家試験も迫っていて、「バイトと両立きついな〜」と漏らしていたのを覚えている。

モデルもメイドも「楽しいからやってただけ」で、将来の夢とは別軸。
人生設計は意外としっかりしていて、「〇歳で結婚して、〇歳で出産して…」という青写真も持っていた。そして、それを実行中の今がある。

俺と付き合ったことすら、もしかしたらその計画の一環だったのかもしれない。

「だってさー、看護師の仕事しながらアイドルとかやってたらぶっ倒れるって。
 声優とか一回くらいやってみたかったけど、さすがにもう無理。
 てか、あんたと子供できたし?」

さらっと言ってのける彼女に、俺はもう何も言えなかった。


推し活すらしなかった俺の後悔

それだけ頑張ってたんだから、客として一度くらい接客受ければよかったのかもしれない。

後になって、友人と一緒に別のメイド喫茶へ行く機会があり、「もちこもこういう雰囲気の中で頑張ってたんだな」と思った瞬間、急に後悔が込み上げてきた。あのとき、推しTシャツでも着てZoomに潜り込んでおけば、良い思い出になったかもしれない。チェキ1枚でもいい、何か形に残せばよかったなと。

でもたぶん、当時の俺には無理だった。

彼女を“彼女”としてしか見てなかったから、推し活モードに入れなかったんだ。嫉妬とかプライドとか、そういうのが邪魔をしてた。今なら「むしろ自慢だろ」って思えるのに。


ふと思い返すと、もちこはそれ以前のバイトはどれも長続きしなかった。嫌なことがあればサクッと休むし、「バイト=つまらないもの」という認識だったようだ。

でも、モデルもメイドも違った。

むしろどちらも“仕事”というより“表現”として楽しんでいた気がする。自分の裁量で動ける環境の方が向いてるんだろうな。実際、コミュ力は高いし、初対面でもガンガン喋れるタイプ。男受けもいいし、人気出るのは納得だ。

もしかしたら、あれは彼女にとって天職だったのかもしれない。


そして今、「現実のもちこ」との日常

今、結婚して一緒に生活していると、ふとした瞬間に思い出す。

洗い物しながら「この人、元メイドでモデルで人気投票に出てたんだよな……」と。Tシャツ姿で鼻歌を歌いながら洗濯物をたたむ彼女が、かつてバーチャルステージの中心に立っていた姿と重なると、妙に笑えてくる。

俺にとって彼女のあの経験は、「驚き」と「心配」と「自慢」の全部が詰まった思い出だ。

そしてたぶん、あのとき信じて見守っていたからこそ、今の俺たちがあるんだと思う。

その現実が、いちばんおもしろい。

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