親族に囲まれて育つ息子は、自分と違う子に育つのか?乳幼児期の発達を調べてみた

祖父母や親戚、犬に囲まれた赤ちゃんを父親が見守るイラスト

自分は、かなり自己中心的で、やんちゃな子どもだった。

今の言葉で少し丁寧に表現すれば「自分の気持ちに正直な子」なのかもしれない。しかし、当時を知る自分としては、もっと短く「ガキンチョだった」と言ったほうが正確だと思う。

私は長男で、従兄弟自体はたくさんいた。ただ、近所に祖父母や親戚が住み、日常的にいろいろな大人と顔を合わせる環境ではなかった。

一方、今の息子は、私とはかなり違う家族環境で育っている。

長期の里帰りによって、父母だけでなく、祖父母、妻のいとこなどの親戚、そのほかの身近な家族、そして犬までいる。家の中に、両親以外の人や動物との接点が自然にある。

この違いは、息子の今後の成長に何か影響するのだろうか。

もちろん、「親族が近くにいなかったから自分はわがままになった」と言いたいわけではない。反対に、「親族に囲まれている息子は協調性の高い子になる」と決めつけるつもりもない。

父親の自分とは違う環境で育つ息子を見ながら、乳幼児期の発達について調べてみた。

私と息子では、育つ環境がかなり違う

私の幼少期にも、両親やきょうだいがいて、たまに会う従兄弟もいた。ただ、生活の基本単位は自宅の家族だった。

今の息子の周りには、もう少し広い人間関係が日常として存在している。

  • 父母が育児の中心にいる
  • 祖父母とも日常的に顔を合わせる
  • 親戚が遊びに来たり、声をかけたりする
  • 同じ家に犬がいる

とはいえ、祖父母は現役で働いている。いつも祖父母が抱っこし、育児を全面的に引き受けているわけではない。

育児の中心はあくまで父母。その周囲に、息子を気にかけてくれる大人が複数いるという形だ。

息子から見ると、声の高さも、抱き方も、あやし方も人によって違う。犬は犬で、こちらの都合をほぼ考えずに動く。父母だけで完結する生活より、刺激の種類は多そうに見える。

ただし、「刺激が多い」と「発達に良い」は同じ意味ではない。ここを混ぜると、親族の人数を競う謎の育児選手権が始まってしまう。

そもそも性格は、育つ環境だけでは決まらない

最初に確認しておきたいのは、子どもの性格を家庭環境だけで説明することはできないという点だ。

乳児期から、刺激への反応の強さ、活動性、怖がりやすさ、気持ちの切り替えやすさなどには個人差がある。発達研究では、こうした比較的早い時期から見られる反応や自己調整の特徴を「気質」として扱う。

2025年に公表された過去25年の研究レビューでも、乳児の気質は、生物学的・遺伝的な要素を含む一方、文化や養育環境などの影響も受けながら発達すると整理されている。

つまり、性格形成は「生まれつきか、育ちか」の二択ではない。子どもが持って生まれた傾向と、その子に周囲がどう応じるかが、長い時間をかけて組み合わさっていく。

私がガキンチョだった理由も、長男だったこと、当時の家庭環境、本人の気質、その後の経験などが絡み合っているはずだ。親戚との距離だけを犯人にするのは、さすがに捜査が雑すぎる。

乳児期の発達で大切なのは「反応に応えてもらえること」

では、0歳から乳幼児期の発達について、研究上は何が重要だと考えられているのか。

WHOは、乳幼児期に必要な「Nurturing
Care(養育的ケア)」として、健康、栄養、安全・安心、応答的な養育、早期学習の機会を挙げている。特に、3歳までの子どもが応答的な養育を受け、親やその他の養育者がそれを実践できるよう支援されることを強く推奨している。

ここでいう応答的な養育は、英語教材を聞かせ続けるような一方向の“知育”とは少し違う。

赤ちゃんが声を出す。

大人が顔を見て返事をする。

赤ちゃんが視線を向けたものを大人も見る。

笑えば笑い返し、嫌がればいったん止める。

こうした、子どものサインに気づき、意味をくみ取り、タイミングよく応じるやり取りが中心になる。

102件のランダム化比較試験をまとめた国際的なメタ分析では、3歳までの子どもを対象にした養育支援プログラムは、認知、言語、運動、社会情動、愛着などの改善と関連していた。中でも、応答的な養育を含むプログラムは、それを含まないものより、認知発達や親子のやり取りなどへの効果が大きかった。

大事なのは、特別な教材の数より、日常の小さな往復なのかもしれない。

「大人が多いこと」だけでは、まだ意味は決まらない

ここで、わが家の話に戻る。

息子の周りには複数の大人がいる。では、大人が多ければ多いほど発達に良いのか。

調べた限り、そのような単純な結論は出せない。

大人が何人いても、赤ちゃんの様子を見ずに一方的に話すだけなら、応答的なやり取りが増えたとは限らない。反対に、普段は父母と過ごす家庭でも、子どもの声や表情に丁寧に応じていれば、豊かなやり取りは十分に生まれる。

複数の大人がいる環境の利点を考えるなら、「人数そのもの」ではなく、次のような機会が増えやすいことだろう。

  • 誰かが息子の声や表情に反応する機会
  • 違う声、表情、話し方に触れる機会
  • 抱っこ、歌、遊びなどのバリエーション
  • 父母が疲れているときに、別の大人が関われる余地

これは研究からわが家に当てはめた推測であり、「大人が多いほど発達が進む」と証明された話ではない。

人数よりも、安定して関わる大人が、息子の反応を見ながら付き合っているか。わが家で見るべきなのは、こちらだと思う。

言葉は「聞かせた量」より、会話の往復が重要かもしれない

赤ちゃんはまだ言葉を話さなくても、声、表情、視線、身ぶりで会話に参加している。

言語発達の研究では、大人が話した単語の総量だけでなく、子どもと大人の「会話のターン」が注目されている。

9〜24か月の子ども122人を追跡した研究では、会話のターンと語彙の成長が互いに関係する可能性が示された。また、幼児を対象にした別の研究では、会話の往復回数が、家庭の所得や大人の発話量だけでは説明できない言語能力や言語関連の脳活動と関連していた。

ただし、これも「一日○往復すれば賢くなる」というノルマではない。子どもの発達が会話を増やし、会話がさらに発達の機会になるという双方向の関係も考えられる。

わが家では、父母だけでなく祖父母や親戚も息子に話しかける。返事が「あー」「うー」でも、それを受けてまた誰かが返す。息子が犬を目で追えば、「ワンちゃんいたね」と声が飛ぶ。

人が多いことで、言葉を浴びる量よりも、こうした小さな会話の入口が増えている可能性はありそうだ。

愛着は、父母以外の大人との間にも形成される

愛着というと、母親と子どもの一対一の関係を想像しやすい。しかし、現在の愛着研究では、子どもが父親や祖父母、保育者など、複数の養育者との間に、それぞれ異なる愛着関係を形成しうると考えられている。

一方で、顔を合わせる大人全員が自動的に「愛着対象」になるわけではない。子どもが不安なときに安心を求め、継続的で個別的な関係が積み重なることが必要になる。研究レビューでも、愛着のネットワークは複数になりうるが、無制限ではなく、関係の質と継続性が重要だと指摘されている。

わが家では、父母が日常の育児を担い、その周囲に祖父母や親戚がいる。

この形なら、「父母との関係が薄くなるほど人を増やす」のではなく、父母という安心の土台があり、その外側にも少しずつ信頼できる相手が増える環境として見るのが自然だろう。

祖父母だから自動的に愛着ができるわけではない。ただ、日常的に顔を合わせ、抱っこし、あやし、泣いたときに応じる経験が積み重なれば、息子にとって安心できる相手になる可能性はある。

人が多ければ、人見知りをしなくなるのか

これは期待したくなるが、そうは言い切れない。

人見知りや見慣れない人への警戒には、発達段階と気質の個人差が関係する。6〜36か月を追った大規模な縦断研究でも、見知らぬ人への怖がり方には複数の発達パターンがあり、子どもごとの差が確認されている。

したがって、「たくさんの人に会わせたから人見知りしない」「人見知りするのは人に会わせていないから」とは言えない。

むしろ、知らない人を警戒すること自体を失敗と考えないほうがよさそうだ。息子が不安になったとき、安心できる大人のところに戻れ、落ち着いたあとに自分のペースで相手を観察できる。その経験のほうが重要だろう。

親族が多い環境は、「人見知りを消す装置」ではない。安心できる場所から、少しずつ人間関係を広げられる可能性がある環境、と考えるくらいがちょうどよい。

祖父母が身近にいると、子どもの発達に良いのか

祖父母と孫の関係については、世界各地で多くの研究が行われている。

ただし、2019年の系統的レビューでは、祖父母との同居、世話の程度、金銭的支援、家庭事情、文化、測定する発達指標などが研究ごとに大きく異なり、「祖父母の関与」の効果にはかなりのばらつきがあると整理されている。

祖父母が関わる家庭と関わらない家庭では、そもそもの生活環境が違うことも多い。祖父母の存在だけを切り出して、認知能力や社会性への因果関係を証明するのは難しい。

そのため、研究から言えるのは「祖父母が近いと頭が良くなる」ではない。

祖父母が、安定した関係、会話や遊び、父母への支援を提供するなら、子どもにとって好ましい環境の一部になりうる。一方、養育方針の衝突や、誰が責任を持つのか分からない状態が続けば、人数の多さがそのまま利点になるとは限らない。

結局、ここでも問われるのは人数ではなく、関係の中身だった。

わが家では、何が起きているのか

現在のわが家は、祖父母が育児の主役ではない。

祖父母は現役で働いており、日中ずっと息子を見ているわけではない。ミルク、寝かしつけ、風呂など、生活の中心は父母が担っている。

その一方で、家にいる時間が重なれば、祖父母が声をかけたり、抱っこしたりする。親戚が来れば、いつもと違う顔や声に出会う。犬が動けば目で追い、鳴けば周囲の大人も反応する。

ここには、明確な早期教育のカリキュラムがあるわけではない。

ただ、息子が何かしたときに、誰かが気づく可能性は高い。

笑えば、誰かが笑い返す。

声を出せば、誰かが返事をする。

犬を見れば、「犬がいたね」と言葉が添えられる。

眠そうなら、静かな場所に移す。

研究で重視されている「応答的なやり取り」を、特別なトレーニングとしてではなく、生活の中で増やしやすい環境ではあると思う。

ただし、息子が社交的になるか、言葉が早くなるか、協調性が高くなるかは、まだ何も分からない。今見えているのは、結果ではなく、機会が多そうだということだけだ。

直接的な知育より、「親に余裕ができる効果」のほうが大きいかもしれない

今回調べていて、わが家にとって最も現実的だと感じたのは、祖父母や親戚が息子へ直接与える“教育効果”より、父母の負担が少し軽くなることだった。

0歳児の育児では、睡眠不足も、ミルクも、泣き対応も待ってくれない。両親だけで回していると、子どもに丁寧に応じたいと思っていても、体力が先に尽きることがある。

2026年の系統的レビューでは、家族や友人からの社会的支援は、0〜3歳の子どもを育てる親のストレスに対する保護要因として整理されている。また、別の研究群では、強い親ストレスは養育の質の低下と関連することが示されている。

ここから先は、わが家についての推測になる。

誰かが少し抱っこしてくれる。

食事中に見ていてくれる。

「今日も大変だったね」と話を聞いてくれる。

その結果、父母が10分でも休み、次に息子が声を出したときに、少し穏やかに返事ができる。親族の存在が発達に影響するとすれば、この間接的な経路はかなり大きいのではないかと思う。

息子に知育を一つ追加するより、まず親のHPを回復させる。ゲームなら地味な回復魔法だが、育児では意外と主力技かもしれない。

息子が自分と違う子に育つかは、まだ分からない

調べてみて分かったのは、「親族が多いほど子どもが優秀になる」という話ではなかった。

乳幼児期に重要と考えられているのは、安心できる養育者がいること、子どもの反応に大人が応えること、言葉や遊びの往復があること、関係が安定していること、そして養育する側にも余裕があることだ。

祖父母や親戚が身近にいる環境は、それらが生まれる機会を増やしやすい。ただし、人数だけで効果が決まるわけではなく、息子自身の気質も、これからの経験も影響する。

だから、私と息子の幼少期を単純に比較して、答えを出すことはできない。

代わりに、この記事を成長記録の入口にしたい。

1歳では、安心できる相手がどう広がったか。言葉や身ぶりの往復がどう変わったか。

2歳では、親族や犬とどのように遊ぶのか。初対面の人にどう反応するのか。

3歳では、自分の気持ちをどう伝え、周囲の人とどう関わるのか。

発達を採点するためではなく、環境と本人の個性がどう組み合わさっていくのかを、父親として見ていきたい。

息子が父親よりおとなしい子になるのか。それとも、父親以上のやんちゃ坊主になるのかは、まだ分からない。

もし後者なら、親族総出でも手に負えない可能性がある。それも含めて、今後の成長を楽しみにしている。


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