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DFSとは?Wi-Fiが突然切れる理由は気象レーダーかもしれない

Wi-Fiルーターと気象レーダーの電波が干渉するイメージ図。DFSで周波数を切り替える様子を視覚化。 働き方とIT活用
DFSはWi-Fiとレーダーが共存するための重要な仕組みです。

~レーダーと電波の“譲り合い”を知ろう~

はじめに:Wi-Fiが突然切れた…その犯人は?

「Zoom会議中に急にWi-Fiが切れてしまった」
「FPSゲームで突然ラグって、ルーターのせいにしたくなった」

…そんな経験、ありませんか?

実はその原因、あなたのWi-Fiが空からの電波に“譲っていた”だけかもしれません。

特に5GHz帯のWi-Fiを使っている人は、ある義務機能の影響を受けている可能性があります。それが今回のテーマである DFS(Dynamic Frequency Selection) です。


DFSとは?〜検索で混乱しやすいワードの正体〜

まず「DFS」で検索すると、次のような別物がズラリと並びます。

  • DFS=分散ファイルシステム(Distributed File System)
  • DFS=免税店(Duty Free Shop)
  • DFS=探索アルゴリズム(Depth-First Search)
  • DFS=がんの治療成績指標(Disease-Free Survival)

ですが、今回のDFSは「Wi-Fiが気象レーダーを避けるための機能」です。正式名称はDynamic Frequency Selection(動的周波数選択)
5GHz帯の無線LANが、気象レーダーや航空レーダーと干渉しないよう、自動で周波数を切り替える仕組みを指します。

この仕組みは、日本では電波法施行規則 第49条の9などに基づき、技術基準適合(技適)を通じてルーターやアクセスポイントに搭載が義務付けられています。


なぜDFSが必要なの?──レーダーは命を守る国家インフラ

DFSの仕組みは、生活を守る気象レーダーの通信を**家庭用Wi-Fiが邪魔しないようにする「譲り合いのルール」**です。

たとえば東京都には、次のようなレーダーが多数存在しています:

  • 東京スカイツリー:XバンドMPレーダー(豪雨監視用)
  • 羽田空港周辺:TDWR(Terminal Doppler Weather Radar)
    → 突風やマイクロバーストをリアルタイムで検知し、航空機事故を防止
  • 多摩・立川・青梅エリア:Cバンドドップラーレーダー

これらは5GHz帯の電波を使っていることがあり、Wi-Fiとバッティングすることがあります。
そんなとき、Wi-Fi側が自動で退避してくれるのがDFSです。


DFSが働くとWi-Fiはどうなるの?

DFS対象チャンネルを使っているWi-Fiルーターは、レーダー電波を検知すると以下の動作をします:

  1. レーダー信号を検出
  2. 60秒間のスキャン(チャンネル利用可否確認)
  3. 使用中の通信を停止し、他チャンネルへ自動切替
  4. 通信再開(または別バンドに移動)

この間、Wi-Fiが一時的に切れたり、速度が遅くなったりするのは正常な動作です。


どこでDFSが作動しやすい?──東京都の例

東京都は、気象・航空レーダーの密集地域です。とくに以下のような場所ではDFSが作動しやすく、Wi-Fiが不安定になるリスクも高くなります。

  • 羽田・成田空港など空港周辺
  • スカイツリーや東京タワー周辺
  • 多摩西部や奥多摩地域(山岳レーダー設置)

高層マンションや見通しの良いエリアでは、思わぬ影響を受けることもあります。


あなたのWi-Fiは大丈夫?簡単にできるチェックと対策

✅ 使用中のチャンネル帯域を確認するには?

ルーターの管理画面またはスマホアプリ(例:NetSpot, WiFi Analyzerなど)で、
W52/W53/W56のどの帯域を使っているかを確認しましょう。

帯域周波数DFSの要否特徴
W525.15–5.25 GHz❌ 不要安定して使える(屋内専用)
W535.25–5.35 GHz✅ 必要DFS対象、干渉しやすい
W565.47–5.725 GHz✅ 必要DFS対象、5GHz主力帯域

✅ 対処法3つ

  1. DFS非対象帯域(W52)に固定する
     → ゲームや会議で不安定が困る場合に有効
  2. メッシュWi-Fiを導入する
     → 自動で切り替えてくれるのでDFS影響を感じにくくなる
  3. Wi-Fi 6E/7に切り替える
    6GHz帯が使えればDFS対象外。さらにWi-Fi 7ではDFS帯域での通信回避技術(MLO/Puncturing)も期待される
  4. 有線LANを検討する
     → 物理的に最も安定。固定機器には効果的

まとめ:見えないけど大切な“電波の譲り合い”

DFSは、単に「Wi-Fiが切れる原因」ではありません。
「命を守る電波に譲るための優しい仕組み」です。

あなたのWi-Fiが一瞬止まったそのとき、もしかしたら上空では大雨や突風の予測が行われていたかもしれません。

見えないけれど、必要な電波のやりとり。
私たちの快適な暮らしと、安全な空の交通を支えてくれているDFSの仕組みを、
少しだけでも理解しておくと、トラブルへの対処や機器選びにもきっと役立ちます。


追伸:この記事で扱ったDFSは…

繰り返しになりますが、ここでいうDFSはDynamic Frequency Selection
分散ファイルシステムでも、免税店でも、がん治療でもありません。

あなたのWi-Fiと、空の安全を守るレーダーをつなぐ、大切なしくみです。

よくある質問(FAQ)

Q
ルーターのチャンネル帯域が160MHzに設定されていても、実際に80MHzなどで接続されるのはなぜ?
A

160MHzは理論上の最大帯域ですが、DFS対象チャンネルを含んでいる場合、
干渉回避のため160MHz帯域すべてが使用できないことがあり、自動的に80MHzや40MHzに制限されることがあります。
DFS検出中や、他の機器との互換性を優先する場合も、自動的に狭い帯域で接続される仕様です。


Q
DFSチャンネルを使っていた場合、ルーターはレーダーを検知して他チャンネルに切り替わりますが、その後元のチャンネルに戻るの?
A

いいえ、多くのルーターでは一度レーダー検出によって退避したチャンネルには自動では戻らない仕様となっています。
その後も安定した通信を優先するため、別の非DFSチャンネルでの通信が継続されます。
※ルーターやファームウェアによって動作は異なる場合があります。


Q
DFSを有効にすると、Wi-Fiの切断や速度低下が起きやすくなりますか?
A

DFS対象チャンネルを使用している場合、以下のような現象が発生することがあります:

  • 起動時に最大60秒ほどスキャンが行われ、接続できるまでに時間がかかる
  • 使用中にレーダーを検知すると、一時的にWi-Fiが切断される
  • 混雑しているチャンネルに切り替わると、通信速度が低下することもある

頻繁に起きるものではありませんが、リアルタイム通信(オンライン会議やゲーム)への影響が気になる場合は、DFS非対応帯域を選ぶか、6GHz帯への移行も検討しましょう。


Q
飛行機が発する電波で、DFSが発動することはありますか?
A

ごくまれに可能性があります。

飛行機自体が発する通信(ADS-BやTCASなど)はDFSとは無関係ですが、
機上の気象レーダーや、空港周辺に設置された地上のドップラーレーダー(例:TDWR)が発する電波が、
Wi-Fiルーターに検知されてDFSが発動することがあります

特に次のような環境では注意が必要です:

  • 空港周辺(羽田・成田など)に近い場所
  • 飛行機の進入・離陸ルート直下
  • DFS対象帯域(W53/W56)を使用しているWi-Fi

とはいえ、DFSが発動する主な原因は地上設置型のレーダー(気象庁・航空施設)です。
飛行機自体が直接の原因になるのは非常に限定的なケース
と考えてよいでしょう。

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