子どもの前で親がスマホを見ることには、気を配る理由があります。ただし、少し見るだけで発達に害が出る、とまでは言えません。
わが家でも、私がスマホを見ていると子どもも使いたがります。自分の使い方は子どもにどう影響するのか。乳幼児を対象にした研究から考えてみました。
子どもの前でスマホを見ると、どんな悪影響が考えられる?
子どもが画面を見ていなくても、親の反応は変わっていた
ドイツの国際精神分析大学ベルリン(IPU)などの研究チームが2025年に発表した実験では、母親が赤ちゃんといつもどおりにおもちゃで遊ぶ時間と、赤ちゃんのそばでスマホに届くメッセージへ返事を入力する時間を比べました。メッセージは、親しい友人から相談が届いたつもりで答えてもらうものです。
スマホで返事を入力している間は、赤ちゃんが声を出しても、親が声をかけたり、顔を向けたり、触れたりすることが減り、反応するまでの時間も長くなりました。赤ちゃんの笑顔なども少なくなっています。
わが家でも、「パパのことをすごく見ているのに、気づいてくれないね」というようなことを言われた経験があります。子どもがこちらを見ていたことに、自分では気づいていませんでした。
最近は、一人で遊んでいると思っていても、意外と親のことを見ているんだなと感じます。リビングにある鏡越しに、こちらを見ていることもあります。目が合うと笑ってくれるのが、かわいいんですよね。
研究で測っている行動とまったく同じではありませんが、親が画面を見ている間の関わり方は、自分にも関係のある話です。ただし、この実験で将来の発達への害まで確かめたわけではありません。
発達や行動との関連もある。ただし、関連の大きさは小さい
オーストラリアのウーロンゴン大学の研究チームは、2025年に複数の研究をまとめた分析を発表しています。そこでも、子どものそばで親がスマホなどの端末を使うことは、認知面の低い成績や、感情・行動の問題が多いことなどと関連していました。
ただし、関連の大きさは小さく、スマホが原因とまでは言えません。「影響は気にしなくてよい」と片付けることも、「スマホを見ると発達に問題が出る」と決めつけることも、この結果からはできません。
紙に書いているときも、子どもへの反応は減っていた
では、スマホだから起きることなのでしょうか。ドイツのルール大学ボーフムと米国のジョージタウン大学の研究チームが2021年に発表した実験では、子どもと遊ぶ途中で、母親にアンケートへ答えてもらいました。スマホに入力する場合と、紙に書く場合、遊びを中断しない場合を比べています。
スマホでも紙でも、アンケートに答えている間は、子どもの働きかけに親が反応することが減りました。一方、子どもから親の気を引こうとする行動は増えました。この実験では、スマホの方が紙よりもやり取りを妨げる、という差は確認されていません。
さらに、作業後には母親の関わり方が中断前の水準へ戻っています。途中で反応が減ったことと、その後も関係が悪くなることは、分けて考える必要があります。
意外だったのは、スマホを置けばそれで十分とは限らないことです。紙に集中していても、子どもへの反応は減っていました。自分が何を持っているかだけでなく、何に注意を向けているかも気になります。
メールを確認しただけで、子どもがスマホを触りに来る
わが家では、メールを確認しようとスマホを開くと、それまで一人で遊んでいた子どもが遊ぶのをやめて、スマホを見たり、触ろうとしたりすることがあります。
私は立ち上がって手が届かないようにすることもあれば、スマホをしまうこともあります。そのままスマホで遊ばせてあげることもあります。
在宅ワーク中にパソコンを触りたがるのも似た場面です。かわいいけれど、仕事中は困ることもあります。少し構ったり、おもちゃを渡したりして、しのいでいます。いつでも作業をやめて遊べるわけではない、というのも実際のところです。
スマホをしまっても、子どもは探そうとします。そのうち別の気になる物を見つけると、そちらへ行く感じです。
本を読んでいるときも寄ってきます。ただ、私の読む本は難しいのか、すぐにポイ。それでも、また私が読み始めると寄ってきます。スマホだけに起きることではないんですね。
一緒に遊ぶのを中断したつもりはなくても、自分が何かを使い始めると子どもが寄ってくる。わが家のそんな場面は、親子で遊ぶ途中にスマホを使う実験とは、少し違います。
子どもの写真や動画をスマホで一緒に見ることもあります。そのときも、やはり子どもはスマホを触ろうとします。ただ、メールを一人で確認しているときとは、こちらからの声かけが変わります。
スマホや本そのものが気になるのか、親がしていることに興味があるのか。理由は分かりませんが、触りに来ることだけで、親に放っておかれているとは判断できないと思います。
一方、夫婦で話していても、相手がスマホを見ていると「聞いてる?」となることはあります。きっと相手から見た自分もそうなのだと思います。子どもが同じように感じているかは分かりませんが、声をかけられたときにどう返しているかは、自分にも身近な話です。
触りに来たときに端末をよけることと、子どもの声やしぐさに反応することは、別に考えられそうです。スマホを持ったままでも、子どもの方を向けているか。自分が使うときは、そこを気にしたいと思いました。
一緒に遊んでいる途中なら、急がない確認は一段落してからにする。わが家でなんとなく続けている、食事中はテレビやスマホを避けるルールも、子どもの様子に目を向ける時間として考えると、理由を持てそうです。
育児中も、スマホがあって助かることは多い
そもそも、スマホにはかなり助けられています。外出先で地図を確認したり、育児アプリを使ったり。抱っこ紐を使っているときは、子どもにスマホを取られずに使えます。寝かしつけ中に見ることもあります。
子どもに気づかれず、触ろうとされなければ、用事を済ませやすいのも実際のところです。ただ、取られずに使えることと、子どもへの影響がないことは別の話。今回の研究を読んで考えたいのは、便利さを残しながら、子どもが声を出したり、こちらを見たりしたときにどう返すかです。
ただ、少し見るつもりでも、そのままいろいろ見てしまうことはあります。メールを確認して、ニュースも見て、Xも開く。必要な用事で手に取ったスマホでも、見続ける理由は次々に出てきます。
私の場合、まず見直すならこの「ついでに見る」部分です。地図や育児アプリまで使わなくするより、最初の用事が済んだところで一度しまう方が、取り入れやすそうです。これはこれからの使い方として考えていることですが、自分の生活なら、そこから見直したいと思います。
子どもがスマホやリモコンを欲しがる理由は、今回の研究では分かりませんでした。それでも、子ども自身の画面の時間だけでなく、自分が画面を見ている場面にも目を向ける理由は見つかりました。
それでも、スマホを少し見るたびに心配する必要はある?
その場の反応が変わっても、将来の発達までは分からない
IPUなどの研究チームが2025年に発表したのは、生後5〜6か月の子どもと母親52組の実験です。赤ちゃんの声に親が声や視線などで反応することや、赤ちゃんの笑顔などには変化がありましたが、不機嫌な様子が増えるかどうかは実験の順序によって異なりました。「スマホを使うと必ず不機嫌になる」という結果ではありません。
ウーロンゴン大学の研究チームによる分析は、5歳未満を扱った21研究、計14,900人のデータをまとめています。大半は、ある時点の利用状況と子どもの状態を調べた研究です。親のストレスが双方に関わるなどの可能性もあり、原因と結果を特定したものではありません。
紙でも同じなら、家事や読書もよくない?
ルール大学ボーフムなどの研究チームが2021年に発表したのは、20〜22か月の子どもと母親54組の実験です。スマホでアンケートに答える人、紙に書いて答える人、そのまま子どもと遊ぶ人に分け、答える人は遊びを2分間中断しました。同じアンケートに答える作業を比べた結果なので、家事や読書もすべて同じ影響がある、スマホ特有の問題はない、とまでは言えません。
何分までなら大丈夫、とは決められない
二つの実験は母子を対象にしており、父親や年齢の違う子どもに同じ程度の変化が起こるとは断定できません。「何分なら安全か」という線引きも、ここで紹介した研究からは決められません。
食事中の使い方や、急がない確認を後にするという案は、研究を踏まえた私の判断です。その対策の効果を、今回の実験が証明したわけではありません。
子どもがこちらを見ていることに気づいたら、できるだけ反応してあげようとはしています。でも、仕事やほかの用事もあり、徹底するのは難しいです。
鏡越しに目が合って笑ってくれる、あのやり取りはうれしいものです。スマホを使う時間があっても、気づいたときには顔を向けて返したい。今のわが家では、そんなふうに考えています。
参考にした研究
[1]国際精神分析大学ベルリン(International Psychoanalytic University Berlin)ほか/Mikić et al.(2025)“Just a second, mommy’s here”: the impact of mothers’ smartphone use on children’s affect regulation and the quality of mother–child interactions. Frontiers in Psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2025.1596219
[2]ウーロンゴン大学(University of Wollongong)/Toledo-Vargas et al.(2025)Parental Technology Use in a Child’s Presence and Health and Development in the Early Years: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Pediatrics. DOI: 10.1001/jamapediatrics.2025.0682
[3]ルール大学ボーフム(Ruhr University Bochum)・ジョージタウン大学(Georgetown University)/Konrad et al.(2021)Quality of Mother-Child Interaction Before, During, and After Smartphone Use. Frontiers in Psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2021.616656


