2026年8月末、妻と0歳の息子を連れてハワイへ行った。
旅行が決まったら、普通は何を見るだろう。天気、レストラン、観光地、赤ちゃん連れで使いやすい移動手段。僕ももちろん調べた。
でも、旅行前に毎日のように開いていたものがもう一つあった。
ドル円だった。
1円円高になると「よし」。翌日2円円安になると「うわ、また高くなった」。何にも勝っていないし負けてもいないのに、気分だけは毎日決算発表だった。
海外旅行の予定が入ると、普段は画面の中の数字だった為替が急に自分ごとになる。今回は、ハワイへ行く前にドル円を気にしすぎていた話を書いてみる。
ハワイを予約したのは6月2日。旅行代は約50万円
今回の旅行を予約したのは2026年6月2日。僕と妻、0歳の息子の3人で、8月末からハワイへ行くことにした。
航空券とホテルは事前予約で、合計はざっくり50万円くらい。ここは円建てで支払っていた。
つまり予約が終わった時点で、旅行代のかなり大きな部分はもう確定している。
それなのに、その後も僕はドル円を見続けた。
理由は単純で、現地では食事、買い物、移動、チップなどドル払いがあるからだ。しかも僕は普段から株やFXを見る習慣がある。為替を見る環境は最初から整いすぎていた。
ハワイ旅行というイベントが、いつもの相場チェックに明確な意味を与えてしまった。
「ハワイ行くまでにどんどん円安進んでる……」
旅行が近づくにつれて、僕は妻にちょくちょく為替の状況を報告していた。
「また円安進んでる……」
「ハワイ行く頃どうなってるんやろ」
そんなことを言っていたら、妻はなぜか自信満々だった。
「行く頃には円高になってるって」
根拠は知らない。
僕はFXまでやって毎日チャートを見ている。妻は僕の為替報告を聞いているだけ。それなのに、ノーチャート側の人間が妙に強気である。
そして本当に円高方向へ大きく動いた。
2026年7月末には日米協調の円買い介入が実施され、ドル円が大きく動いた。財務省も7月31日の協調介入を公表している。
妻、当たっとるやないか。
介入が来たと報告したら「今ドルに変えて」
介入で円高方向へ動いたとき、僕はすぐ妻に報告した。
すると返ってきたのが、
「今使う分振り込むから、ドルに変えといて!」
だった。
言われた通り、そのタイミングで旅行用のドルへ交換した。
後から振り返ると、そのとき買ったドルは、実際に僕らがハワイにいた期間中のレートより有利だった。妻の「行く頃には円高になる」という予想から、ドルへ替える指示まで、今回はかなりいいところを引いている。
僕は毎日チャートを見て一喜一憂。妻はほぼ見ていないのに「円高になる」と言って、実際にいいところでドルを買わせる。
FXとは。
ちなみに、そのドルの一部は現地で妻のエルメスのピアスになった。
1円単位の為替を気にした結果、最終的にエルメスへ着地する。我が家の外貨運用はたぶん教科書には載っていない。
為替が5円違うと、実際いくら変わる?
とはいえ、為替を気にすること自体が無意味なわけではない。
例えば1ドル160円と155円で考えてみる。
- 500ドル使う:8万円 → 7万7,500円。差は2,500円
- 1,000ドル使う:16万円 → 15万5,000円。差は5,000円
- 3,000ドル使う:48万円 → 46万5,000円。差は1万5,000円
現地で使った金額は、厳密に集計したわけではないが、ざっくり50万円くらいだったと思う。
そう考えると、数円の為替差でも1万円単位になる可能性はある。決して無視できる金額ではない。
ただし問題は、その数円を自分で当てられるわけではないことだ。
今日より明日の方が円高かもしれない。逆に円安かもしれない。介入のように一気に動くこともある。毎日見ていると「もう少し待てば」と思ってしまうが、その「もう少し」がいつなのかは分からない。
しかも旅行代の大半はもう円で払っていた
僕が為替を見て一喜一憂していた間にも、航空券とホテル約50万円はすでに支払い済みだった。
ドル円が1円動いても、この50万円は変わらない。
実際に影響を受けるのは、現地でこれから使うお金だ。
食事、買い物、交通費、チップ、ホテルで追加になる費用など。
冷静に考えれば分かる話なのだが、旅行前の僕の頭の中では、ドル円が1円円高になるたびに「ハワイが安くなった」という感覚になっていた。
ハワイ全体の価格がリアルタイムで上下しているわけではない。
現地に着いたら、為替より物価の方が強かった
そして実際にハワイへ行くと、別の問題が出てきた。
普通に物価が高い。
特に食費は、毎回「結構するな」と感じた。
一番分かりやすかったのがステーキ。夫婦2人で食べて約300ドルだった。
仮に1ドル160円なら約4万8,000円。155円でも約4万6,500円。為替が5円違っても差は1,500円である。
旅行前は1円円高になるだけで「よし」と思っていた人間が、現地では一食300ドルの肉を食べている。
為替1円分の差など、肉の前ではかなり小さい。
ホテルでもチェックイン時に驚いた。デポジットや税金などを含め、カード上では700ドルほど動いていた。
デポジットなので最終的にそのまま全額が費用になるわけではない。それでも画面に「700ドル」と出ると一瞬固まる。
旅行前の1円2円の攻防が、急にかわいく見えてくる。
0歳児連れでは「安い方に行こう」ができない
今回は0歳児連れだったので、節約だけを最優先にはできなかった。
大人2人なら「もう少し歩けば安い店がある」「バスで移動しよう」とできる。でも赤ちゃんがいると事情が変わる。
寝ている。泣いている。ミルクの時間。オムツを替えたい。親も疲れている。
そうなると、20ドル安い店を探すことより「今ここで入れる店」の価値が上がる。
僕らはレンタカーも使っていなかったので、移動にも制約があった。
赤ちゃんを抱えて安い店まで30分歩くなら、近い店に入って休んだ方がいい。少なくとも今回の僕らにはその方が合っていた。
このあたりの赤ちゃん連れハワイ全体の話は、別記事の「生後8ヶ月の赤ちゃんとハワイ6泊。行きの飛行機は天国、帰りは地獄だった」でまとめている。
帰国したら、今度はさらに円高になった
今回の話には、もう一つオチがある。
ハワイから帰ってきた後、ドル円は旅行中よりさらに円高になった。
妻の指示で介入時にドルへ替えたタイミングは、ハワイで使う分としてはかなり良かった。それでも時間をもっと後ろまで伸ばせば、旅行中より円高の場面はやってきた。
では帰国後まで待ってドルを買えばよかったのか。
もちろん無理である。
その頃にはもう日本にいる。
ステーキも食べ終わっているし、ピアスも買い終わっている。
為替だけを後から見れば、「あの日まで待てばもっと安かった」はいくらでも言える。でも旅行には出発日がある。
為替には「旅行者にとって今が底です」と教えてくれる機能はない。
それでも為替を見ていて良かったこと
じゃあ旅行前に毎日ドル円を見ていたのは全部無駄だったのかというと、そこまでは思わない。
今1ドルがだいたいいくらなのか分かっていたので、現地の値段を日本円へ換算しやすかった。旅行用のドルを少しずつ買う判断にも使えた。介入で大きく動いた場面では、実際にドルを買えた。
何より、僕はもともとFXを見る人間である。
旅行資金を準備しているタイミングで相場が大きく動いたので、半分くらいはイベントとして楽しんでいた気もする。
問題は、為替を見ることではなく、毎日の1円2円を「旅行の勝ち負け」にまで昇格させていたことなのだと思う。
次に海外旅行へ行くなら、為替は「予算作り」に使う
次に海外へ行くなら、為替はもちろん見る。
ただ、「もっと円高になったら予約しよう」と為替だけで旅行時期を決めることはしないと思う。
為替を待っている間に航空券が上がるかもしれない。ホテルが埋まるかもしれない。家族旅行なら休みや子どもの予定もある。
だから次回は、少し厳しめの為替レートで旅行予算を作り、それでも払えるなら予約する。現地で使うドルも、必要なら何回かに分けて買う。
円高になればラッキー。円安になっても、最初に作った予算の範囲なら予定通り行く。
このくらいがちょうどいい。
まとめ:たぶん次の旅行でもドル円は見る
今回、旅行前はドル円を見るたび一喜一憂していた。
「ハワイ行くまでにどんどん円安進んでる……」と僕が言う横で、妻は「行く頃には円高になってる」と自信満々。
本当に介入が来て円高になり、妻の指示でいいところでドルへ交換。そのドルで現地の買い物もした。
一方、現地では300ドルのステーキを食べ、ホテルでは700ドルの表示にビビり、ざっくり50万円ほど使った。
そして帰国したら、旅行中よりさらに円高になった。
結局、為替のベストタイミングは後からならいくらでも言える。
旅行者にできるのは、為替を当てることではなく、少し余裕を持って予算を作ること。そして現地に着いたら、1円の差より家族でどう過ごすかを優先することなのだと思う。
……とはいえ、次の海外旅行が決まったら、僕はまたドル円を見る。
たぶん1円円高になったら、また妻に報告する。
「円高きたで」
そして次も妻が自信満々なら、予想については僕より妻を信じた方がいいのかもしれない。

