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遠距離・年の差・ゲーム婚、それでも僕たちは結婚した。

オンラインゲーム内で出会い、結婚する2人のキャラクターが夜空の下で並んで立っているシーン 家庭と暮らし
ギルドで出会い、夜空の下で始まった2人の恋の物語

~出会い・悩み・そして恋の始まり~


■深夜2時、ギルドチャットに現れた“プロポーズ”

202X年の6月某日、梅雨の雨音が静かに響く夜、僕はいつもどおりスマホゲーム『ラグナロクマスターズ』にログインしていた。
社会人である僕は、平日は仕事を終えた夜遅くにプレイするのが日課。ギルドのリーダーという立場でもあり、戦力管理やチャットの空気づくりに精を出していた。

そんなある日、新人メンバーが加入した。名前は「もちこ」。
第一印象は「開幕からおもろい子だな」という派手な登場だったので警戒していたが、話してみるとノリが合う。冗談にも笑って返してくれるし、意外と真面目。なんとなく、一緒にプレイする時間が増えていった。

ある日、いつものようにギルドチャットで雑談していた時。
もちこが言った。「ギル旅しよっかな〜」

……ん?ギル旅?今このタイミングで?

ギルドのみんなと楽しそうにしてたのに、唐突すぎる。

理由を聞くと、もうすぐ結婚していると有利なコンテンツが実装するらしい。
なるほど、そういうことか。僕もそのコンテンツは風の噂で聞いてはいた。

僕もまだ未婚だった。
もちこはもうログオフしていたが、しばらく考えてDMを送った。
「結婚するなら俺にしとけ!」


我ながら思い切ったもんだ。そしてその日返事は来なかった。


■プロポーズの返事は翌朝に

ちなみに、もちこはそのまま寝落ちしていた
つまり、僕が「結婚するなら俺にしとけ!」とイキってメッセージを送ったあと、彼女は一言も発さずにログアウト。

翌朝、ログインしたらDMの履歴に「え!?結婚してくれるの!?」と驚きのメッセージ。
「お、おう……返事なかったけど」と送ると、「え、うそでしょ~寝てた~!!!」と、ちょっと困ったような、でも笑ってるようなメッセージが返ってきた。

慌ててゲームの日課を終わらせて、深夜2時に入籍手続きが完了。

そして、一言。

「私、ガチ恋勢だから覚悟してね」

正直ちょっとドキッとした。「真剣なのか冗談なのかどっちなん!?」って戸惑いもあった。でも、うれしかったのを覚えている
このあたりから、僕は少しずつ「ゲームの中だけでは終わらない気がする」と感じ始めていた。


■Discordボイスと共有カレンダーと“リアル化”

ゲーム婚をきっかけに、Discordでの毎日の日課になるボイスチャットが始まった。
お互いの声で「おはよう」「おやすみ」と言い合ううちに、不思議な安心感が生まれていった。

「今日、学校行った?」
「……寝坊して、行かなかった……」
「バイトは?」
「……ドタキャンした……」

ある日、「Googleカレンダーでスケジュール共有しよっか」と僕が提案。
毎日胃が痛いのを黙って、「もちこは学校とバイトでいつも忙しそうだったし」と伝えた。

実際、卒業単位は大丈夫なのかと親に心配されているような状態で、僕も不安になるほどだったけど、彼女は「なんとかなるっしょ~」という感じで心配は拭えなかった。

スケジュール共有は意外に便利で、生活のリズムや予定が自然とリンクしていった。


■まさか15歳差…それでも伝えた“本当の年齢”

そして関係が深まっていく中で、ある話題が避けられなくなった。それが年齢差。
出会った当時、年齢を正直に言えなかった自分がいた。
ゲーム内でも年齢の話題になることもあった。その時は「30代」としか伝えていなかった。

ゲームなので年齢なんて関係ないと思っていた半面、怖さもあったんだと思う。

僕は当時35歳、彼女は大学生で20歳。
ギルド加入当初から「学生っぽいな」と思っていたが、まさか15歳も離れていたとは。

正直、年齢を言うのは怖かった。35歳という数字が、彼女の反応を変えてしまうかもしれない。
「父親とあまり変わらないじゃん」なんて思われたらどうしよう。

気づかれないうちに距離を取れば楽だと思った。でも、それは“逃げること”だって、どこかでわかってた。
そしてそれ以上に、「ちゃんと向き合いたい」と思ったから、伝えようと決めた。

「……実は、35歳なんだ」

沈黙。彼女の反応が怖かった。
でも、意外にも彼女は「年齢とか気にしてないよ」と軽く言ってくれた。

でも、「本当に?気を遣わせてない?その場だけのやさしさじゃない?」とか
心のどこかで、「自分が勝手に気にしてるだけなのかもしれない…」そう思いながらも、不安は残っていた。

実は僕、目が悪くて「緑内障」も持っている。将来のことを考えると、恋愛や結婚に対して躊躇する部分が大きかった。

その後も、彼女は態度を変えなかった。むしろ、僕が体調を崩したときには心配してくれたり、わがままを笑って受け入れてくれたりした。
そのとき初めて、「ああ、本当に“年齢じゃなくて人間として見てくれてるんだな”」って、安心できた。

正直、こんなことでもなければゲームで付き合うなんて発想すらなかった。


■リアル初対面は“厚底クロックス”とどか盛り丼

7月21日。ついにリアルで会うことになった。

その日にゲーム内での結婚式も予定してた。W記念日だ。前日から、彼女は「お腹痛い……」と連呼していた。本人は緊張とワクワクの混ざった気持ちだったらしい

最寄り駅で待ち合わせ。マスク姿だったが、彼女はすぐにわかった。背が高く見えたけど、実は厚底クロックスを履いていた。

第一声は「もちこさんですか?」
「はい!まさおさん……ですよね?」
互いにぎこちない笑顔。でも、不思議と落ち着いた。Discordで話してきた時間が、緊張を少しだけ和らげてくれた。

前日に送られてきた写真では口元が隠れていて、マスク越しの対面だったので、家に着いてマスクを外してようやく「本物」とご対面。僕の頭の中では、映画のスローモーションのようなBGMが流れていた

彼女の家で出してくれた晩ごはんは、山盛り茄子そぼろ丼の圧巻のボリューム。
「え、男の人ってこれくらいペロリなんじゃないの?……パパ基準だけど」と笑う彼女。
「いや、オレの胃袋低スペックすぎなんだけど!笑」とツッコんだが、内心は嬉しかった。僕のために準備してくれたことが伝わったから。

結婚式(ゲーム内)も無事に終わった。仲間たちからの祝福メッセージ、リアルでは手をつなぎながら、画面越しに「おめでとう」と言われる不思議な体験。そして、「この人と一緒にいよう」と決めた心の内だった。

遠距離恋愛は、不安もある。会いたくても会えない。話してても、ちょっとした誤解で気持ちがすれ違う。でも、それ以上に“事件”が多くて、毎日がネタの宝庫だった。

「この人といると、毎日何かが起こる」

正直、こっちが呆れることもある。でも、なぜか笑える。そういう自分にもちょっと驚いてる。

寝坊はデフォルト、予定は未定、でも愛情はずっと本気。僕たちの共有カレンダーは、予定を管理するものから、人生の「笑える記録帳」に変わっていった。


■この出会いは偶然?それとも必然?

ゲームで結婚して、Discordで声を聞いて、Googleカレンダーで予定を共有して、リアルで会って、ご飯を食べて……。

一見すると「運命的」と言うにはあまりにも不器用で、遠回りなプロセスだったかもしれない。
でも、どれも嘘じゃなかったし、真剣だった。

実際に会って、付き合い始めた後も年齢差のことは、ずっとどこかで引っかかっていた。
笑い合える日もあれば、「この差が原因でうまくいかなくなるかも」と不安になる日もあった。
でも、それでも一緒にいたいと思えた。相手が年齢ではなく、“僕自身”を見てくれていると信じられるようになったから。
恋愛は年齢じゃないとよく言うけど、そう言い切れるようになるまでに、とても悩んだし、逃げたくなるのを抑えて向き合った。

そして、「この人と一緒にいたい」と今まで思えたのは、もちこが笑って「大丈夫だよ」と言ってくれたからだと思う。


■まとめ:恋は予定外のタイミングで始まる

ゲーム婚なんてネタに見えるかもしれない。でも僕たちにとっては、真剣な一歩だった。
すべてが計画外で、偶然の連続。それでも、少しずつ確かに前に進んできた。

恋は狙って始まるものじゃない。
気づいたら始まっていて、いつの間にか手を繋いで歩いている。
そんな僕たちの第1章は、「予定外」の連続だった。

今、あらためて思う。
あのとき「年齢とか気にしてないし」と言ってくれて、本当にありがとう。

出会いの形や年齢差に正解なんてない。
もし今、迷っている人がいるなら――その一歩は、きっと悪くないよ。


■次回予告

次回以降は同棲編、両親へ挨拶編、プロポーズ編、新婚旅行編、結婚式編と連載予定です

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