犬を飼ったことはありません。それでも妻とは「犬がいてもいいね」と話したことがあり、身近でも2匹目を迎える話が出ています。
そんな中、SNSで「犬が病気になり、手術などで約120万円必要になった」という趣旨の投稿を見ました。家計に簡単に出せる余裕はなく、最終的には資産を取り崩して治療費を用意した、という内容です。
投稿そのものの事情は分かりませんし、ここでその家庭の判断を評価するつもりもありません。ただ、自分に置き換えたときに「120万円か」と急に現実味が出ました。
餌代や散歩、旅行しにくくなることくらいは想像していました。でも、ある日突然100万円単位の医療費が必要になるかもしれない。病気によっては1回で終わらず、通院や再手術が続くかもしれない。そこまで含めて「飼える」と言えるのかは、考えたことがありませんでした。
そこで、「ペット保険に入っていれば大丈夫なのか?」から調べてみました。結論から言うと、ペット保険は高額治療の負担をかなり減らせる場合があります。ただし、「70%補償」と書いてあれば120万円の70%=84万円が必ず戻る、という仕組みではありません。ここを知らずに入ると、いざというときの自己負担が想像より大きくなる可能性があります。
結論:ペット保険は役立つ。でも「補償割合」だけでは分からない
ペット保険を調べて最初に意外だったのが、同じ70%補償でも商品によって実際の保険金が大きく違うことでした。
理由は、補償割合とは別に「通院1日あたり」「入院1日あたり」「手術1回あたり」といった支払限度額が設定されている商品があるからです。
たとえばアニコム損保の「どうぶつ健保ふぁみりぃ」70%プランは、通院・入院がそれぞれ1日あたり最高1万4,000円、手術が1回あたり最高14万円です。第一アイペットの「うちの子」70%プランは、通院1日あたり1万2,000円、入院1日あたり3万円、手術1回あたり15万円が上限です。(出典:アニコム損保「どうぶつ健保ふぁみりぃ」、第一アイペット「うちの子」)
一方、第一アイペットの「うちの子ライト」90%プランは、手術とそれに連続する入院に特化し、手術1回につき50万円までを年2回補償します。リトルファミリー少額短期保険の「わんデイズ・にゃんデイズ」は、年間120万円の補償枠の中で、診療区分ごとの支払限度額や日額・回数制限を設けない設計です。(出典:第一アイペット「うちの子ライト」、リトルファミリー「わんデイズ・にゃんデイズ」)
つまり、見るべきなのは「50%・70%・90%」という数字だけではありません。高額治療を心配するなら、1回・1日ごとの上限、年間上限、通院まで含むか、免責金額があるかまで確認する必要があります。
もし治療費が120万円だったら、自己負担はいくらになる?
単純に「治療費120万円」とだけ置いて比較すると不正確なので、今回は比較用のモデルケースを作りました。実際の診療費ではありません。
今回のモデルケース
手術80万円、入院5日で30万円(1日6万円)、退院後の通院5回で10万円(1回2万円)。合計120万円とします。すべて各保険の補償対象となる病気・診療だったと仮定し、年間の利用回数も上限内とします。保険料は犬種や年齢などで変わるため、ここでは比較しません。
アニコム「どうぶつ健保ふぁみりぃ」70%の場合
手術は80万円×70%=56万円ですが、1回14万円の上限があるため保険金は14万円。入院は1日6万円×70%=4万2,000円ですが、1日1万4,000円が上限なので5日で7万円。通院は1回2万円×70%=1万4,000円で、5回なら7万円です。
この前提では、保険金は合計約28万円、自己負担は約92万円になります。
第一アイペット「うちの子」70%の場合
手術は上限15万円。入院は1日3万円までなので5日で15万円。通院は1日1万2,000円までなので5回で6万円です。
この前提では、保険金は合計約36万円、自己負担は約84万円になります。
第一アイペット「うちの子ライト」90%の場合
この商品は手術と、手術を含む連続した入院が補償対象です。今回のモデルでは手術80万円+入院30万円=110万円が対象になり、90%なら99万円ですが、手術1回あたり50万円の上限があります。通院は補償対象外です。
そのため、今回の前提では保険金は50万円、自己負担は70万円になります。
リトルファミリー「わんデイズ・にゃんデイズ」70%の場合
70%補償・免責金額0円を選んだと仮定します。この商品は診療区分ごとの支払限度額や日額・回数制限がなく、年間補償限度額の範囲で使う仕組みです。
今回の120万円がすべて補償対象なら、70%の84万円が保険金となり、自己負担は36万円です。
以下の表は、ペット保険の優劣を決めるランキングではなく、同じ高額治療でも商品設計によって自己負担がどれだけ変わるかを見るための比較です。
| 商品例 | 補償割合 | 主な上限構造 | モデルの保険金 | 自己負担 |
|---|---|---|---|---|
| アニコム ふぁみりぃ | 70% | 通院・入院1.4万円/日、手術14万円/回 | 約28万円 | 約92万円 |
| 第一アイペット うちの子 | 70% | 通院1.2万円/日、入院3万円/日、手術15万円/回 | 約36万円 | 約84万円 |
| 第一アイペット うちの子ライト | 90% | 手術+連続入院50万円/回 | 50万円 | 70万円 |
| リトルファミリー | 70%・免責0円 | 年120万円、日額・回数・診療区分上限なし | 84万円 | 36万円 |
同じ120万円の治療でも、今回のモデルでは自己負担が約92万円から36万円まで変わりました。もちろん、この比較だけでどの商品が一番良いとは言えません。保険料、加入年齢、免責、対象となる病気、更新条件などが違うからです。
ただ、「70%補償だから3割負担」と思い込んではいけないことはよく分かりました。高額治療への備えを重視するなら、補償割合より先に限度額の構造を見た方がよさそうです。
普段から120万円かかるわけではない。でも高額治療はゼロではない
120万円という数字だけを見ると、犬を飼うのがかなり怖くなります。ただ、毎年それくらいの医療費がかかるわけではありません。
では、そもそも120万円という請求額は現実的なのでしょうか。第一アイペットの2026年調査では、過去最高の1回の診療費が「10万円以上」だった飼育者が18.5%で、最高300万円という回答もありました。120万円は一般的な診療費ではありませんが、100万円を超える高額診療が実際に起こり得ることは分かります。(出典:第一アイペット「2026年版ペットの支出に関する調査[医療費編]」)
また、アニコム損保が公開している事例では、7歳のミニチュア・ダックスフンドが椎間板ヘルニアでMRI・CT・手術・10日間の入院などを受け、診療費合計が38万7,500円となった例があります。これは平均的な相場を示すものではありませんが、高度な検査や手術、入院が重なると費用が膨らむイメージはつかめます。今回の「120万円」のモデルケースも、典型的な治療費の内訳を示すものではなく、保険商品の支払構造を比較するための仮定です。(出典:アニコム損保「犬の保険金請求のケース別事例」)
アニコム損保が契約者を対象に行った2025年の年間支出調査では、犬1頭にかけた年間支出は平均41万3,416円、そのうちケガや病気の治療費は8万9,120円でした。これはアニコム契約者へのアンケートなので、すべての犬の飼い主を代表する数字ではありませんが、日常的な支出感を考える材料にはなります。(出典:アニコム損保「2025最新版 ペットにかける年間支出調査」)
第一アイペットが犬・猫の飼育者1,000人を対象にした2026年版調査では、犬だけを見ると2025年の年間医療費が「2万円未満」だった飼育者は31.2%でした。一方で「6万円以上」かかった層も27.6%います。犬猫全体では、これまでで最も高かった1回の診療費が「10万円以上」だった人が18.5%で、最高300万円という回答もありました。突発的な病気やケガによる高額診療費を不安に挙げた人は47.1%です。(出典:第一アイペット「2026年版ペットの支出に関する調査[医療費編]」)
この2つを見て、考え方が少し変わりました。問題は「犬は毎年ものすごくお金がかかる」ではなく、「普段は払える金額でも、低頻度で家計に大きなダメージを与える支出が発生し得る」ことなのだと思います。
そう考えると、まさに保険で備える意味があるリスクです。ペット保険は「払った保険料以上に得するか」ではなく、100万円単位の突発支出によって治療の選択肢が狭まるリスクを家計から切り離すもの、と考えると分かりやすいです。ただし、先ほど見たように保険だけで完全に消せるとは限りません。
ペット保険に入っていても残るリスク
補償対象外の費用がある
ペット保険は、動物病院で払った費用なら何でも対象になるわけではありません。たとえばアニコムでは、健康体への予防目的の去勢・避妊手術や、症状のない場合の美容目的の歯石取りなどは補償対象外です。保険会社や商品によって条件は異なるため、何が対象外かは契約前に確認が必要です。(出典:アニコム損保「どうぶつ健保ふぁみりぃ 補償内容」)
病気になってからでは入れないことがある
すでに治療中の病気や過去の傷病によって、加入できなかったり、その病気だけ補償対象外になったりする場合があります。アニコムの「どうぶつ健保ふぁみりぃ」では、初年度の病気について30日間の待機期間も設定されています。
「病気になったら保険に入ればいい」は基本的に通用しないので、加入するなら元気なうちに検討する必要があります。
保険料そのものも長期コスト
補償が厚いほど必ず得というわけでもありません。毎月・毎年の保険料がかかり、年齢によって保険料が上がる商品もあります。
今回の記事では「高額治療が来たときにどうなるか」に絞ったので保険料比較まではしていません。実際に加入を決めるなら、若い時の月額だけでなく、シニア期まで継続した場合の保険料も見たいところです。
我が家なら「ペット保険+現金」で考える
調べる前は、「120万円もかかるなら簡単には飼えないな」という感覚でした。調べた後も、簡単に飼えるとは思っていません。ただ、「120万円を全部現金で用意できなければ飼えない」とまで考える必要はなさそうです。
自分なら、高額治療に対する補償構造を確認したうえでペット保険に入り、それでも残る自己負担を現金で備える形を考えます。
たとえば今回のモデルなら、選ぶ保険によって自己負担の想定は36万円にも92万円にもなりました。必要な現金は「ペットだから一律100万円」と決めるより、加入する保険でどこまで移転できるかを見て逆算する方が合理的です。
NISAなどの運用資産をいざというときの最後の安全弁にする考え方はあり得ると思います。ただ、最初から「病気になったらNISAを売ればいい」と考えるより、少なくとも想定される自己負担分は現金で分けておいた方が、相場が下がっている時に売る必要もなく、夫婦でも判断しやすそうです。
飼う前に夫婦で決めておきたいこと
今回一番考えさせられたのは、保険商品よりこちらでした。
1.ペット保険に入るか。入るなら何を守りたいか
日常の通院まで広くカバーしたいのか、それとも100万円級の手術を中心に備えたいのか。目的によって選ぶ商品は変わります。
2.高額治療に、家計からどこまで出せるか
50万円なら出せるのか。100万円ならどうか。200万円ならどうするのか。数字を決めればそれが絶対の治療上限になる、という話ではありません。ただ、何も話さずに病院で突然判断するよりは、家庭としての資金余力を共有しておく意味は大きいと思います。
3.どの資産から払うか
生活防衛資金、ペット用の現金、投資資産。高額治療が必要になったとき、どこから出すのかをあらかじめ考えておけば、「払える・払えない」の話と「売りたくない」という投資判断が混ざりにくくなります。
4.2匹になった場合も耐えられるか
1匹なら備えられても、2匹なら保険料も日常費も増えます。さらに、片方に治療費がかかっている時期にもう片方も病気になる可能性はゼロではありません。2匹目を迎えるなら、平均的な年間費用だけでなく、緊急時の現金余力も2匹分で考えた方がよさそうです。
まとめ:犬が欲しいかだけでは決められなかった
120万円という治療費の話を見たとき、最初に思ったのは「ペットって簡単に飼えないな」でした。
調べてみると、ペット保険で高額治療の負担をかなり減らせる商品はあります。一方で、「70%補償」だけを見て3割負担だと思っていると、1回あたりの上限によって大きな自己負担が残ることも分かりました。
今のところ、自分の中での結論は「保険か貯金か」ではなく、「保険で大きなリスクを減らして、残る部分を現金で持つ」です。
そして、保険以上に重要なのは、飼う前に夫婦で「高額治療が必要になったらどうするか」を話しておくことだと思います。犬を迎えてから初めて100万円の判断をするのでは遅い。欲しいかどうかだけでなく、その責任を家計として引き受けられるか。そこまで考えてから決めたいと思うようになりました。
※保険商品の補償内容は2026年10月時点の公式情報をもとにしています。実際の保険金支払額は診療内容、契約条件、免責、補償対象外事項などで変わります。加入時は各社の最新の重要事項説明書・約款をご確認ください。


