導入
Wi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)は、920MHz帯を利用する新しいWi-Fi規格。
長距離通信・低消費電力・障害物透過性という特性から、監視カメラ用途での実証が日本各地で進んでいます。
ただし、まだ家庭向けの普及には至っておらず、先行しているのは法人・自治体の現場。
今回は、国内での代表的な事例を紹介した上で、芦ノ湖での1km級伝送の実証を詳しく見ていきます。
日本国内の主なWi-Fi HaLowカメラ事例
島根県雲南市 ― 獣害対策
- 目的:イノシシやシカなどの獣害を減らすため、農地をカメラで監視
- 仕組み:Wi-Fi HaLowでカメラ画像を送信し、自治体や地域団体が遠隔で確認
- ポイント:農業分野における“実害対策”として、自治体主導での実証が進んでいる
高知県 ― IoPクラウド連携
- 目的:農業や治水のための遠隔監視を効率化
- 仕組み:カメラ映像とセンサーデータをWi-Fi HaLowで集約し、県のクラウドへ送信
- ポイント:農業DXや災害対策に直結するモデルケースとして注目
建設現場 ― タワークレーン監視
- 内容:仮設現場において、約370m離れた場所からカメラ映像をHaLowで伝送
- メリット:配線不要で設置が容易、現場ごとに変化する安全監視ニーズに柔軟に対応
芦ノ湖 ― 1km超伝送を実現した国内最大級の実証
ここからは、数ある国内事例の中でも特に注目される芦ノ湖の実証プロジェクトを掘り下げます。
実施体制
- 主体:NTT東日本 神奈川事業部、フルノシステムズ、IIJ、芦之湖漁業協同組合
- 期間:2024年4月~5月
- 場所:神奈川県足柄下郡箱根町・芦ノ湖湖岸
実証の目的
- 密漁や不法操業の監視
- 遠隔からの安全見守り(漁協の巡回負担を軽減)
技術と仕組み
- 通信規格:IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow)
- 伝送距離:湖の対岸1km超
- カメラ運用:昼間は人物検知・モーション検知でイベント駆動、夜間はIRライトや照度調整を組み合わせ
- 電源:ソーラーパネル+55Ahバッテリーで、日照不足にも対応
実証の成果
- 通信品質:200~300kbpsを確保し、昼夜とも映像伝送が可能
- 運用性:人物検知で不要な映像送信を抑制、電力と帯域を効率的に活用
- 課題:夜間の暗所でIRを使うと消費電力が増えるため、電源設計の工夫が不可欠
法令対応
- 日本の電波法では、920MHz帯で免許不要の利用が可能だがDuty比10%制限がある
- この制限を守るために、イベント検知+断続的な送信という運用を実証に取り入れた
事例から見える未来
芦ノ湖の事例からわかるのは、**「1km以上離れた場所でも、省電力で実用的な監視が可能」**ということ。
農業・漁業・建設現場などで先行導入が進むのはもちろん、将来的には以下のような家庭ユースにも応用が期待されます。
- 自宅の庭や駐車場を省電力で監視
- 別宅や倉庫など、電源・通信が取りにくい場所の見守り
- 災害時の臨時監視(避難所や河川の増水チェック)
機種紹介:Askey CAM2301 の主な仕様
リンク
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通信規格 | Wi-Fi HaLow(IEEE 802.11ah, 900MHz 帯) |
| その他の無線・有線接続 | Wi-Fi 802.11 b/g/n(近距離)、PoE(IEEE 802.3af)、有線LAN / イーサネット |
| 画質・映像性能 | 2MP(1/2.8″ STARVIS センサー)、1080p FHD@30fps、HDR 対応、トリプルストリーム、60fps FHD+720p スナップショット対応 |
| レンズ・視野 | 固定レンズ f=3.0〜3.03、F1.6、視野角(水平約 105°/垂直約 58.9°/対角線約 122°) |
| 赤外線暗視性能 | IR 入光フィルター(Mechanical ICR)、内蔵赤外線イルミネータ 15m 距離、モード切替あり |
| ストレージ | SDカードスロット(ローカル保存) |
| 音声入出力 | Audio IN/OUT あり(ライン入力/出力) |
| 防塵防水・耐環境性 | IP66、動作温度 ‐20°C~+60°C、湿度 <85%(結露なき状態) |
| 電源・消費電力 | DC 12V / PoE、IRオフ時約 0.35A、IRオン時約 0.7A |
| サイズ・重さ | 約 245.7 × 72 × 72 mm、重量約 800 g |
| その他機能 | モーション検知/人物検知(AI)あり、クラウド VMS/モバイルアプリ対応 |
まとめ
Wi-Fi HaLow カメラは、日本国内でも複数の事例が動き始めています。
- 雲南市の獣害対策
- 高知県のIoPクラウド連携
- 建設現場のクレーン監視
- そして、芦ノ湖の1km超伝送
特に芦ノ湖の実証は、距離・電力・法令対応をすべてクリアした象徴的なケースとして注目に値します。
家庭での普及はまだ先ですが、今後のスマートホームや防災の文脈で確実に役立つ技術です。


