キッチンは妻の聖域、俺は“お客さん”
我が家は共働き。にもかかわらず、キッチンに立つのはいつも妻だ。
料理が尋常じゃなく得意で、冷蔵庫に何もないと嘆きながらも、なぜかパパッと美味しいものを作ってしまう。そんな妻を尊敬しつつも、僕にはひとつ大きな悩みがあった。
「妻が料理得意すぎて、俺の出番がない」問題。
「何か手伝おうか?」と勇気を出してキッチンに足を踏み入れても、「いいよ、座ってて」と優しく微笑まれる。その瞬間、胸にチクリと刺さる。さらに「はい、お飲み物どうぞ」なんて出された日には、完全に“お客さん扱い”。自分の家なのに、なぜか落ち着かないのだ。
レシピを見れば一応作れる。だが、やる気スイッチがどこにあるのか自分でも分からない。買い出し、計量、手順確認、洗い物…と考えただけで腰が重くなる。
包丁を握るよりマウスをカチカチする方が100倍慣れているし、フライパンなんてキャンプの時くらいしか触らない。そう、これは「言い訳」であり「生存戦略」なのだ。
料理しない夫の言い訳コレクション
「料理なんて俺には無理ゲーだ!」と心の中で叫びながら、妻に告げてきた言い訳をここに公開しよう。
- デジタル派の誓い:「包丁よりマウスの方が慣れてる。PC作業で貢献するから!」
→ キッチンで汗をかくよりExcelで家計簿を整える方が得意。現代の騎士(?)的言い訳。 - 自然派シールド:「フライパンなんてキャンプ用しか触ってないから」
→ キッチンのフライパンは重いし、油の跳ねも怖い。ワイルド調理と家庭料理は別ゲーだ。 - 究極の無理ゲー理論:「材料が全部揃ってないと無理」
→ 料理をRPG扱いし、攻略本(レシピ)があってもアイテム(食材)が一つでも欠ければ冒険終了。
「玉ねぎとにんじんしか残ってない? じゃあカレーは無理だよね?」とロジックを振りかざすが、ただ妻を困らせているだけ。
読者の中にも「わかるわかる」と膝を叩いている同志がいるだろう。これは料理下手な夫たちの通過儀礼のようなものだ。
気づいた:共働きで“ゼロ参加”はやばい
ある日ふと気づいた。
「あれ? 共働きなのに、料理を全部妻に任せるって、公平じゃなくない?」
僕が仕事で疲れて帰ると、妻も同じくらい疲れているはず。なのに夕飯まで任せるのは、やっぱりおかしい。
せめて週に一度でも僕がキッチンに立てば、妻も安心するはずだ。
そう思い立った僕は、一大決心をした。
得意料理なんてなくてもいい。とにかく「これなら任せろ!」と胸を張れる十八番をひとつ持とうと決めたのだ。
目指すは簡単・美味しい・見栄えするメニュー。そして僕が選んだ最強の一手が、あの伝説の丼だった。
選んだのは「豚こま+もやし焼肉タレ丼」
僕の十八番に決まったのは、その名も 「豚こま+もやし焼肉タレ丼」。
安直な名前だが、そこには深い哲学がある。
- 豚こま:近所のライフに冷凍パックを売っているため、常備。とにかく掴んで入れるだけで良いのでとりあえず入れるだけで楽。最高。
- もやし:冷蔵庫の救世主。安い、早い、シャキシャキ。多少焦げても、タレでごまかせる懐の深さ。
- 焼肉のタレ:味付け問題を一撃解決する魔法の調味料。大さじ・小さじ?そんなもの不要。ジャッとかければOK。
- 卵をポン!:中央に卵をのせるだけで、急に料理した感が爆誕。これはもはやアートだ。
究極のレシピ(実録)
【材料】
- 豚こま切れ肉 … 200g
- もやし … 1袋
- 焼肉のタレ … 大さじ3(適量)
- 卵黄 … 1個(ドヤ顔演出用)
- ごはん … たっぷり
【作り方】
- フライパンに油をひき、豚こまを炒める。
→ 火が通ればOK。形は気にするな。 - 色が変わったら、もやしを投入。
→ シャキ感命。強火で30秒が勝負。 - 焼肉のタレをジャーッとかける。
→ ご飯が進むよう気持ち多めで。 - 全体を絡めて、そのままの勢いで目玉焼きを作る。
- 目玉焼きができたら火を止める。
- 丼にご飯を盛り、具材をのせ、中央に目玉焼きをオン。
【失敗談】
- もやしを炒めすぎてカピカピ。
- タレを入れすぎてご飯がスープ化。
- 目玉焼きが焦げる。生よりまし。
でも笑い話になるので怖くない。
作ってみた感想と妻のリアクション
妻から「お、やるじゃん」と言われた瞬間、僕は確実にドヤ顔をしていた。
豚こまともやしの質素コンビが、タレと卵の魔法で立派な一品に変身。そしてそれを「自分一人で作った」という達成感。これはクセになる。
ただし食後、キッチンは戦場と化していた。油まみれのフライパン、タレの飛び散ったコンロ、床に転がるもやし…。
「やるのはいいけど、片付けまでが料理だからね?」と妻に笑顔で怒られるオチつき。
でも僕は学んだ。料理は上手くなる必要はない。大事なのは「やってみよう」と関わることだ。
まとめ:料理下手夫の生存戦略
料理が不得意でも、キッチンから逃げなくていい。
無理に妻のポジションを奪う必要はない。自分の十八番をひとつ持てばいいのだ。
僕にとってそれが 「豚こまもやし丼+卵のせ」 だった。
全国の「やる気スイッチ紛失中」の同志たちよ。
まずはスーパーで豚こまともやしと焼肉のタレを手に入れてほしい。
きっと家族の笑顔と、ちょっとしたドヤ顔のチャンスが待っている。
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