昼休み。
ようやくデスクから解放され、プロテインバーをかじりながら一息ついていたそのとき。
向かいの席から声が飛んでくる。
「最近どの株買ってる?」
……来た。
社会人の昼休みを地獄に変える、禁断の話題・株トークである。
投資しててもしてなくても、この一言には全員が胃をキュッと縮めるのではないだろうか。
投資してる人は「金額バレそう」と冷や汗をかき、してない人は「このあと長くなりそう」とため息をつく。
なぜかどちらも救われない。
株トークが地雷な理由
1. 金額バレ問題
「ちょっと株やってるだけですよ」と言った瞬間、「どの銘柄?」と聞かれる。
そこで“トヨタ”とか“ソニー”と言えば、「それなりに資金あるな」と思われ、
“新興株”と言えば「ギャンブル好き」認定。
もう一言で社会的イメージが決まる。
2. マウント合戦の泥沼
「昨日10万円勝った」「先週50万やられた」。
どっちに転んでも反応が難しい。
勝った人には「すごいですね〜」しか言えず、
負けた人には「ドンマイです…」と慰めるしかない。
昼休みがカウンセリングの場になる。
3. 結果論トークの無限ループ
「あのとき買ってれば今頃2倍だったんだよ」
→知らんがな。
こっちは未来のチャートを見られない。
それでも過去の“たられば相場”が永遠に続く。
4. プライベート感が強すぎる
株は結局、お金の話。
給料や貯金の話を職場でしないように、株トークも踏み込みすぎると人間関係が壊れる。
それでも逃げたい、株トーク回避の三種の神器
ニュース逃げ
「最近円高ですね」
「日経平均、揺れてますね」
これで十分。
知ってる感だけ出して、深入りは避ける。
詳しく聞かれたら「ニュースで見ただけです」で完封。
NISA無難トーク
「NISAやってます?」
投資経験者にも初心者にも通じる万能カード。
逆質問されても「王道のインデックスで」で切り上げれば、それ以上は掘られない。
家計防衛トーク
「配当入るとちょっと嬉しいですよね」
そこから「食費も上がってますよね〜」へ自然にスライド。
話題は“投資”から“家計”に変わり、場の空気が穏やかになる。
株クラ同僚に巻き込まれる日常
どこの職場にもいる、株の話をせずにはいられない人たち。
彼らは悪気がない。だが、昼休みを犠牲にしてくる。
勝ち自慢型
「昨日ストップ高だったんだよ!」
こっちは“すごいっすね”ボタンを押すだけの機械になる。
損失共有型
「マジで50万溶けた…」
なぜか“精神ケア係”にされる。
ご飯の味がわからなくなるやつ。
布教型
「今がチャンスだって!お前も買えよ!」
買わなければ“非国民”、買えば“共犯者”そして売買に報告義務が発生。
投資警察型
「投資してないの?老後やばいよ」
急に将来不安を植え付けてくる。保険の営業よりタチが悪い。
買っておけばよかった型
「○○買ってれば今頃2倍だったのに」
一番無害そうで、一番時間を奪うタイプ。
過去のチャートを見ながら語る彼の目は、遠い未来を見ているようで、実は今昼休みが終わることを知らない。
バレたときのサバイバル術
逃げ切れなかった場合の最終手段。
バレたときは焦らず、被害を最小限に抑える。
小さく見せる
「NISAでちょっとだけです」
金額を勝手に小さく想像してもらえる。
堅実キャラで通す
「ルール決めて長期でやってます」
急に“真面目で計画的な人”というイメージを持たれる。副作用:好感度上昇。
趣味枠に落とす
「まぁ楽しみ枠です」
投資の重さを一瞬で軽くする言葉。
直撃されたときの模範解答
「少しだけ持ってますよ。どうして知ってるんですか?」
逆質問で主導権を奪い返せる。会話はたいていここで終わる。
やってはいけないNG対応
- 「昨日100万抜けた!」→自慢に聞こえる。
- 銘柄を詳しく話す→翌日から“株価報告係”にされる。
- 「株なんてギャンブルですよ」→ガチ勢の怒りを買う。
“堅実キャラ”が最強説
株の話で重要なのは「どの銘柄を持ってるか」ではなく、「どう見せるか」だ。
職場では“インデックス・高配当・長期投資”をキーワードにしておけば、誰も敵にならない。
職場で誰も私が実際はレバも半導体も全開なことを知らないし、“堅実キャラ”を演じ通している。これが大人の処世術。
つまり、心の中で攻め、表では守る。
これが社会人の株トークサバイバルの基本じゃなかろうか。
終わりに
昼休み、またあの同僚がスマホを見ながら呟く。
「うわ、これ上がってるじゃん。買っておけばよかった〜」
その瞬間、あなたは笑顔でこう答える。
「ほんとですね〜。次のチャンスに期待ですね」
——そして、平穏な昼休みを取り戻すのだ。
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