はじめに
2025年8月1日以降、厚生労働省によって「育児休業給付金」などの上限額が引き上げられました。
共働き家庭にとっては実質的な支援拡充であり、特に夫婦で育休を取る場合のメリットが増えています。
この記事では、
- 改定後の最新上限額
- 満額もらえる給与ライン
- 「6か月前」の基準期間の数え方
- 月の途中から始まる場合の注意点
を整理して解説します。
1. 改定の概要(2025年8月以降)
厚労省の最新資料(PDF: 厚生労働省「雇用保険の各種給付金の支給限度額改定について」)によると、2025年8月支給分から以下の通り上限が変更されています。
| 区分 | 支給率 | 改定前上限(月額) | 改定後上限(月額) |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付金(前半180日・67%) | 67% | 315,369円 | 323,811円 |
| 育児休業給付金(後半・50%) | 50% | 235,350円 | 241,650円 |
| 出生時育児休業給付金(パパ育休) | 67% | 294,344円 | 302,223円 |
| 出生後休業支援給付金(上乗せ13%) | 13% | 57,111円 | 58,640円 |
| 育児時短就業給付金 | – | 459,000円 | 471,393円 |
2. 「満額」もらえる給与の目安
給付金は「休業開始時賃金日額 × 給付率 × 30日」で計算され、上限に達したら頭打ちになります。
今回の上限から逆算すると、満額もらえる給与ラインはこうなります。
| 支給率 | 上限(月額) | 満額となる給与目安(総支給) |
|---|---|---|
| 67% | 323,811円 | 約48.3万円 |
| 50% | 241,650円 | 約48.3万円 |
つまり、月給(総支給)が48万円前後の人が満額を受け取れるラインです。
それ以上の給与がある人は、上限により給付金が固定されます。
3. 総支給に含まれるもの・含まれないもの
給付計算に使われるのは「総支給額(税・保険料控除前)」ですが、全てが対象ではありません。
| 含まれる | 含まれない |
|---|---|
| 基本給・残業代・役職手当・住宅手当など | 賞与(ボーナス) |
| 通勤手当(課税対象分) | 交通費(非課税分) |
| 歩合・インセンティブ | 出張旅費・慶弔金・福利厚生手当 |
ポイントは「課税対象かどうか」。
給与明細の“社会保険料計算の対象額”を見ると近いです。
4. 「休業開始の6か月前」とは?
給付額を算出する基礎になるのが、「休業開始前6か月間の賃金」。
ここでいう6か月は「給与の支払い基礎月」を指します。
たとえば12月1日から育休を取る場合で、会社が月末締め・翌月払いなら:
| 対象となる勤務月 | 支給月 |
|---|---|
| 6月勤務分 | 7月支給 |
| 7月勤務分 | 8月支給 |
| 8月勤務分 | 9月支給 |
| 9月勤務分 | 10月支給 |
| 10月勤務分 | 11月支給 |
| 11月勤務分 | 12月支給(締日が11/30で12/1前なので対象) |
つまり、6〜11月勤務分が計算対象になります。
支給日ではなく「締め日」で判断する点に注意が必要です。
5. 月の途中で始める場合
もし育休が月の途中(例:12月15日)から始まる場合は、
- 締め日が12月15日より前なら、その月(11月勤務分)は含まれる
- 締め日が12月15日以降なら、その月(12月勤務分)は除外
「締め日ベースで6回分を遡る」が基本ルールです。
6. 短期の育休(例:12月中旬〜2月中旬)の支給タイミング
育児休業給付金は、原則2か月ごとにまとめて支給されます。
したがって、2か月前後の育休なら支給は1回だけです。
| 区間 | 対象期間 | 支給時期(目安) |
|---|---|---|
| 第1回 | 12/15~2/14 | 3~4月頃(会社経由で申請) |
支給額は「1日あたり給付額 × 休業日数」で日割り計算されます。
このケースでは全期間が180日未満なので、**支給率は67%**です。
7. 夫婦で取る場合のポイント
2025年度から始まった「出生後休業支援給付金」は、
夫婦がそれぞれ14日以上の育休を取得した場合に、
休業前の手取りに近い水準まで補填できる制度です。
夫婦で協力してスケジュールを組むと、手取り減を最小限に抑えられます。
まとめ
- 2025年8月以降、育児休業給付金の上限は引き上げ
- 月給48万円前後までは満額支給(総支給ベース)
- 対象6か月は「締め日ベース」で数える
- 短期休業なら支給は1回、全期間67%適用
- 夫婦で育休を取ると新制度の加算対象になる
💬 編集後記(執筆者コメント)
上限アップは喜ばしい反面、条件が細かくて分かりづらい。
「締め日で判断」「課税対象だけ含む」「夫婦で取ると加算あり」――
このあたりを押さえておくだけでも損を防げます。
共働き家庭にとって、育休中の家計計画は“情報戦”です。
自分の給与明細を見ながら、上限と照らしてシミュレーションしておきましょう。


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